コミュニケーションエラー

 どうやらこのお城は建てられていたものをそのまま撮影セットとして使っているらしい。ボクのほうがヘトヘトになってしまったところに、タコさんに連れられて真っ赤な爬虫類とカマキリっぽいのとブタコウモリが現れる。


『昨日から様子がおかしいと思っていたが、まさかこれほどまでとは』


 まだわけのわからない言語で喋っているもんだから、ボクもときて「えらいやつ呼んでこい!」とブタコウモリの襟首――人間の襟首に相当する部分を掴む。

 一から説明してもらわないと。本人の許可なくこんな大掛かりなドッキリを仕掛けるようなテレビ局だろうと、ボクは出るところに出るからな。


『大王様のお言葉を翻訳できないか』

『やってみるのだ』


 ボクの腕にタコさんの触手が絡みつき、引き離される。


「答えられるやつが答えてほしい。ここはどこなんだ」


 ボクの問いかけに『現在地を聞かれているのだ』と謎言語で返された。日本語で頼む。日本語じゃないとボクが理解できない。どうすればいいんだ……?


 日本語がダメなら英語でチャレンジだ。

 英会話は苦手だけど、ボクは「Whereどこ!」と叫んでみる。


『なんだ!?』

『大王様のご機嫌を損ねてしまったような?』

『アンゴルモア、大王様の側近としてなんとかするのだ!』

『我が!?』

『そうだそうだ。なんとかせい』

『えぇ……』


 トカゲとカマキリとブタコウモリがタコさんを盾にして後ろに隠れた。ガクガクと震えている。ボクの意図に反して、彼らを威圧してしまったらしい。発音が悪かったか。


「あの……驚かせてすいません……でもボクも説明いただかないと」


『大王様の喋られている言葉は、何語なんです?』

『解析の結果、わたしたちがこれから侵略しようとしているの島国で使用されている言語と似ている、と』

『なるほど。我はその言語を習得すれば、大王様と会話できるようになるのだな?』


 話を聞いてくれない。

 家に帰れるなら帰らせてほしいよ……。

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