第2話 苦痛
「困ります……早く頭を上げて下さい……! あなたみたいな人間を初めて見ました……。
もう一度顔を上げた容生を困惑の表情で見つめる少女型アンドロイド。
「いま、私の中に今まで抱いたことのない感情が
「それは『共感』……じゃないかな。嬉しいよ、分かってくれて」
「いえ、それとは異なります」
「じゃあなんだろう」
「いずれ分かるでしょう。それよりも私は今、あなたが二秒後に死んでしまうことを
「そうだね」
「それはつまり、あなたを助けたということなのでしょうか?」
「全く逆だね。君は僕を生きる
「と言いますと?」
「僕は死んだ方が救われる。だから君に殺してくれとお願いしたんだ。君はそれを断った」
「殺しておいた方が良かったと?」
「そうだ」
「……」
「僕は生きていること自体が苦痛なんだ。そこから解放してくれたら君に心からの感謝を伝えるよ」
「人に感謝されることはアンドロイドの生きる喜び……。私の頭の中には確かにそうインプットされています。でも……、人を
「当てはまるさ、きっと」
「分かりません……。どうして殺されることが感謝につながるのか……」
「戦争なんかで人を殺して一時的な高揚感を抱く人間もいるよ」
「それは自分が他人を殺した場合でしょう? どうして自分自身が殺されることを快楽だと捉えられるのか、私には分かりません」
「殴られるのも不快?」
「もちろんです。
「……。要するに弱いからだよ」
「私がですか?」
「人間がだよ。君たちじゃない」
「……」
「自分で自分の息の根を止められないから人に頼ろうとする。自殺ほう助をするサイトなんかが問題になっているのを知っているだろう?」
「はい。一応、身の回りで起こっていることについては情報収集しているつもりです」
「本当に君は素晴らしいよ。何に対しても前向きで……。僕も、他の人間も見習わなければならない」
「そんなことを言ってくれる人間も初めてです。人はみな我々アンドロイドを
「さあ……。僕は人間が嫌いだからかも知れないね」
「嫌い?」
「そうだ。何を考えているか分からないし、何をするか分からない。その不確定要素が僕の頭の中をおかしくさせる。本当にうんざりしているんだよ」
「何を考えているか分からないからこそ面白いのでは?」
「そうやって
「……」
「だから僕は思考が分かりやすい君たちが大好きだよ」
「……」
「すまなかったね、こんな下らない
「いえ……。人間の
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