召喚の儀

――世界は再び勇者をもとめた。


杖を掲げて天にあかりを灯しつつ聖女がしばし唱える祝詞のりと



拝むときふいに呪いを重ねても誰がわたしに気づくだろうか



厳粛なまどろみのなか立ち並ぶ魔法士たちを映せ 玻璃窓はりまど



信じたいことを信じて一人では何もできない王も王子も 



夢にかるくうつつにかるい心身の記憶が沈む確かなところ



魔法とは繰りかえすこと 吹く風をとどめてしんと涼しい木陰                 



天秤の女神は何も赦さない 最初から罪なんてないから



もっとくるでしょう?嫌いだけれどあどけない竜のにおいをばら撒いたから



少しして、少しだけでもここにきて、少しも救わなくていいから



まわりだす召喚魔法の光からあなたがきっと呼ぶ私の名セラフィーナ

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異世界短歌Project~勇者のいなくなった世界で~ 辻原僚 @tuji_kaku

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