氷の巨城

――山脈のふもとの城に、ひとさらいの氷の竜がおりました。


深いゆきの中ではなにも聞こえない誰かを愛していた心音も



たいせつな氷のお城 たいせつによく手入れして客人を待つ



狼が走ろうとして沈んでも跳びあがり跳びあがり雪を越す



ああ、遊びにきたのだろうか。うさぎ。ふわふわとおいしそうな尻して



落ちてくる氷柱を避けていくたびに私が私を守ろうとする



氷壁に浮かぶ無数のてのひらがなだめてくれる日々もあること



望みとは迷路とおもう明け暮れに影がいくつも伸びるおかしさ



城門は開いておいた 区別なく小さい者も入れるように



怖くなり確かめてしまう暴風で城がくずれる夢をみたとき



絵本でも読みつつ笑いにんげんは毛布のなかで寝るのだろうか?

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