――オルクス地方には「魔の森」がある。要するに魔物の巣だ。

蒼ざめてあかるく胸にいとおしい花の匂いは魔蟲のにおい

遠くちかく葉擦れの先を聴きわけて楽観的な足跡を追う

小鬼（ゴブリン）の耳を削ぐとき鮮血に見惚れていては、後ろから来る

数人を連れて歩けば数十の魔物にはもう気づかれている

痛みごと忘れるためにちょっとだけ過去を消すんだ解毒魔法（キュア）ってやつは

木陰からのぞいていれば日は高く綿虫はひかりの舟のよう

ちょうどいい樹々のくぼみに隠れつつおどけつつ昼食をいただく

刀身を一度鳴らしたそのままに大鬼（オーガ）は出会いがしらに殺せ

組合（ギルド）でも言われただろう「何よりもまず己の感情を守れ」と

土をかけて段々見えなくなるまでの、剣士の顔が思い出せない

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