俺はシスコンじゃねぇ!?

 ついに美咲の友達の優希ちゃんと顔を合わせた俺。

さて、彼女は何を言ってくるのか…?


「電話で自己紹介しましたが、やっぱ直接言うべきだと思うんでもう1回。

あたしは、みさちゃんの友達の篠原優希しのはらゆうきです」


…この子、意外に真面目な性格してるな。俺は全然気にしないが。

とはいえ、年下がちゃんと自己紹介したんだ。俺もしないと。


「ご丁寧にありがとう。俺は朝川翔あさかわしょうだ」


「へぇ~。お兄さんもやってくれるとは、思いませんでしたよ」


俺、不真面目そうに見えるのか?


「年下の君がしっかりやったんだ。俺もやるべきだろ」


「…年上なのに、タンスの角に指をぶつけるお兄さん。案外ドジっ子ですね♪」

ニヤニヤし始める優希ちゃん。


って言ったことの嫌味か?


「それは…、さっさと忘れてくれると助かる」


「自信ないですね~」


俺のお願いは、あっさり流された…。



 「それでお兄さん。みさちゃんの部屋に入った理由は、何なんですか?」


昨日の電話でも訊かれたが、あの時は優希ちゃんのお母さんが風呂に入るのを急かしたから、切り抜けることができた。


今回は、ちゃんと答えないとダメだろうな…。


「優希ちゃん。そんな事、気にしなくて良いじゃない」

美咲がフォローしてくれた。助かるぞ。


「あたしにも兄がいるんですけど、絶対部屋に入ってきてほしくないんです。みさちゃんからお兄さんがいることは聴いてましたが、仲が良さそうではないのに部屋に入るのが不思議で不思議で…」


普通の年頃の兄妹はそうかもな。もし罰がなかったら、美咲の部屋に入る機会は今もないだろう…。


「…もしかしてお兄さん、シスコンだったりします?」


「んな訳ねーだろ! 何でそう思うんだ?」


「お兄さんにしても、みさちゃんにしても、部屋に入る理由ぐらいすぐ話せるはずですよね? 話すのを渋る理由は、言いづらい事情があるからでしょ? そこで思い付いたのが、ってことです」


「……」

様子見で黙ることにしたが、美咲も同じようだ。


「お兄さんは、みさちゃんが好きなあまり部屋に無断で何度も入ってくるんです。ですがその行動にキレた神様が、お兄さんに罰を与えた…」


「それが…、タンスの角に指をぶつけた事になるのか?」


「その通り!」

優希ちゃんはドヤ顔で言う。


この子、疑問はとことん追求するタイプみたいだ。

ごまかしても、納得するまで質問するだろう。


それなら、さっさと罰のことを話したほうが良いか?

でもシスコン疑惑を持たれた時に話してもな…。



 「お前達! いつまで話してる? いい加減教室に入れ!」

校門前にいた先生達が、校内に入ってきた。


という事は、そろそろ朝のSHRショートホームルームが始まるのか…。


「仕方ないですね~。今は一旦ここまでです」


予想通り、優希ちゃんは納得していない…。


「お兄さん・みさちゃん。帰りで白黒つけませんか?」


「わかった」


「…いいよ」


俺と美咲がそれぞれ答える。


「じゃあ、帰りのSHRが終わったらここに集合ってことで。…みさちゃん行こ」


「うん。…お兄ちゃん、帰りに会おうね」


「おう」


俺と美咲・優希ちゃんは、学年に合った昇降口を目指し歩き出す。

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