妹の友達とご対面

 俺のドジのせいで、美咲の友達の優希ちゃんに疑われるきっかけを作ってしまった。彼女は『後はよろしく』と言っていたが…。


ようやく宿題が終わり、椅子に座りながら伸びをする。


「お兄ちゃん。宿題終わった?」

待ちかねたように、美咲が声をかけてくる。


「ああ」


「あれから優希ちゃんとメッセージで連絡してたんだけど、明日の登校の時にお兄ちゃんに会いたいんだって。…良いかな?」


さっきの電話で『俺に興味を持った』と言っていたがマジなのか…。


「良いぞ。…ってちょっと待て。俺が美咲と同じ学校なの知ってるのか?」

兄妹だから同じ学校に通うとは限らないよな。


「優希ちゃんと知り合って間もない時に、家族について訊かれてね。お兄ちゃんのことを話したことがあるの。…話さないほうが良かったかな?」


美咲の表情が少し暗くなる…。


「それぐらいなら普通に話すだろう。気にしなくて良い」

つまり優希ちゃんは、以前から俺の存在を知っていた。


そして、あの件をきっかけに興味を持ったと…。そういう事か。


「ありがとう」

美咲の表情が明るくなった。


美咲の友達という事は、1学年下の高1になる。

クラスメートの女子とすら話さないのに、年下とかハードルが高いだろ…。



 美咲の寝る時間になったので、彼女が部屋の電気を消す。

この部屋で寝るのは、今日で2回目か。


眠気はないが、心は落ち着いている。初めてじゃないのは大きいな。

昨日同様、目を閉じて時の流れを待つが、早く寝れる気がするぞ…。



 翌日。再び美咲に起こされるが、昨日よりはスムーズに起きれた。

回数を重ねれば、早く寝れるようになって自分で起きれそうだ。


……朝食を食べながら、優希ちゃんのことを考える。

一体どういう子なんだろう?


電話の受け答えで推測する限り、お堅いタイプではなさそう。その点は安心だ。



 朝食を食べた後、着替えを済ませ登校準備を終わらせる。

完了後玄関に向かうと、既に美咲は靴を履いて待っていた。


「お兄ちゃん。昨日よりテキパキ行動出来て偉いよ」


起こしてもらった以上、強くは言えない。

優しい声色になるよう意識しながら…。


「おいおい、子供扱いするなよ」

これで伝わるか?


「ごめんね」

彼女の表情的に伝わった感じだ。その後、玄関の扉を開けて外に出る美咲。


これから俺が靴を履くからな。場所を空けてくれたのだ。

…俺も靴を履いた後、待っている美咲と共に登校を始める。



 そういえば、美咲が漫画を読むきっかけは女子の友達に教えてもらったからだ。

その友達って、優希ちゃんのことだろうか?


黙ったまま登校するのもつまらんし、訊いてみるか。


「美咲。お前に漫画を紹介したのって、優希ちゃんなのか?」


「そうだよ。ゲームと漫画が好きな子なの」


美咲と接点がなさそうだが、どうやって友達になったんだろう?


「美咲と優希ちゃんが知り合ったきっかけって何なんだ?」


「席が近かったからだね。わからない事とか、優希ちゃんが私に何度も話しかけてきたから、仲良くなったんだよ」


「なるほどな」


…これ以上、優希ちゃんに関することは思い付かない。

もし思い付いたとしたら、本人に直接訊こうか。



 校門に着いた。登校中の生徒が多いし流れがあるので、人探しをするのが難しいな。美咲によれば、ここが待ち合わせ場所になるとか。


俺は優希ちゃんの顔を知らないから、探してあげられないが…。


美咲が流れに逆らわないよう、キョロキョロしながら優希ちゃんを探す。


「…あ!」

彼女が声を上げ、1人の女子生徒を見つめる。


俺も慌てて美咲と同じ方向を観る。


…あの子が優希ちゃんか。ぱっと見、活発そうだ。

美咲と相性が合うか、疑問ではあるがな。


美咲は校門前をくまなく探していたが、優希ちゃんがいたのは校門に入って少し後のところだった。このズレは仕方ないかもな。


俺と美咲は、優希ちゃんに近付く…。

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