初めて妹と登校する

 母さんが俺と美咲に、一緒に登校するように勧めてきた。

美咲の喜ぶ顔を観たら、断れないじゃないか…。



 美咲と一緒に登校する以上、歩幅を合わせないといけない。

…ペースが合わなくて、少しイラつく。


そんな俺とは対照的に、美咲はご機嫌な様子だ。

笑顔だし、鼻歌も聴こえるからな。


「美咲。ずいぶん機嫌が良いじゃないか」

会話をすれば、気が紛れるだろう…。


「もちろん♪ だってお兄ちゃんと一緒に登校できるんだもん。普段は時間が合わないから1人で登校してるけど、これからは一緒に登校できるね♪」


登校については、母さんが俺に与えた罰に入っていない。

なので、断ろうと思えば断れるが…。


「そうだな」

美咲の機嫌を損ねたくないので、一応了承しておく。



 …昨日から気になっていた漫画について、今訊いておこう。

雑談のネタになるはずだ。


「美咲。お前、漫画が好きになったのか? 昨日読んでたろ」


「うん。友達に教えてもらってね。読んだらハマったんだよ」


美咲の友達か…。どういう子なんだろう?


昨日彼女が読んでいた漫画は少年漫画だ。

ということは、男子の友達か? 気になるからすぐ訊こう。


「その友達って、男子か?」


「ううん。女子だけど?」


女子が女子に少年漫画を勧めるのか? 俺には理解しがたい…。


「女子が少年漫画を読むのって、別におかしくないよ?」

考え込んでいる俺に補足する美咲。


「そうなのか…」

逆の立場になって考えると、俺が少女漫画を読むって事だろ?


…全然しっくりこない。本当におかしくないのか?



 気付いたら校門に着いた。おしゃべりしてたら、歩幅のことは気にならなくなったな。漫画の話を切り出して正解だったぜ。


「お兄ちゃん。帰りはどうする?」


「帰りは…、別々で良いだろ。家でも顔を合わせるし…」

正直なところ、帰りぐらいは1人で過ごしたい。


1人の時間がないのは、予想以上にストレスを感じるものだ。


「…そっか。わかったよ」

美咲は落ち込んだ様子を見せるが、これぐらいは許してくれ。


「じゃあね、お兄ちゃん」


昇降口が違うので、美咲とは校門でお別れだ。


「ああ」


俺達は別々の昇降口を目指し歩き出す…。

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