妹の部屋で過ごす最初の夜

 妹の美咲が部屋の電気を消したので、俺も布団に入り大人しくする。

…21時30分に寝れる気なんてしない。


普段の俺は、0時を過ぎてから本番なのに…。

今みたいに美咲に合わせるのが、母さんが俺に与えた罰になる。



 「お兄ちゃん、ごめんね。こんな時間じゃ寝れないでしょ?」


俺のせいでこんなことになったのに、気遣ってくれるのか…。


「お前が気にすることじゃない。悪いのは俺さ」

真面目に規則正しく生活してれば、こんな事にはならなかったんだ。


「…お兄ちゃんは、自分の部屋に戻りたい?」


「当然だ」

美咲の部屋の状況を考慮し、最低限の物しか持ち込んでいない。


なので今日ゲームができなかった。少し物足りないぜ…。

それと、音漏れを気にして爆音で音楽を聴けなかったのも不満だな。


「やっぱりそうだよね…」

何故か寂しそうなトーンで言う美咲。


「お前だって嫌だろ? 俺がこの部屋に居続けたら…」


そういえば、罰の期間について母さんは何も言ってなかったな。

俺の態度次第で変動するって事か?


「そんな事ないよ。今日一緒に過ごせたから、久しぶりにお兄ちゃんとたくさん話せたもん。この部屋にいる時は、いっぱいおしゃべりしようね」


どこまで本心かはわからないが、ここまで言ってくれるのは嬉しい。

今回の罰をきっかけに、俺も心を入れ替えた方が良さそうだ。


「お兄ちゃん。私そろそろ…」


眠気の限界に達したか? 寝かせてやらないと。


「そうか。おやすみ」

未だに寝れる気はしないがな…。


「うん…、おやすみ」


その言葉からちょっと経過した後、美咲の寝息が聞こえてきた…。


寝れないとはいえ、寝返りとかの音で美咲を起こすわけにはいかない。

俺はなるべく動かず・考えずをモットーに、目を閉じて眠くなるのを待った…。



 「……兄ちゃん、お兄ちゃん起きて」

美咲に身体を揺すられる俺。


結局いつ寝たんだろう? 長い間目を閉じていたのは覚えているが…。


「早く起きてよ~」

そう言って、俺の布団をはがす美咲。


布団で温められた空気が、一斉に逃げていく…。

これにより、寝続ける理由はなくなった。


だが、まだ眠いぞ。体は起こせないし、目が開かねー。


「こうなったら…」


美咲の言葉的に何かするみたいだが、目を閉じている俺にはわからない。

…その時、股間を触られる感覚がした。


「何だ!?」

予想しない感覚に襲われたので、咄嗟に体を起こす。


「おはようお兄ちゃん。朝ご飯できてるから、リビングに来てね」

俺にそう伝えた後、部屋を出る美咲。


真面目で優等生のアイツが、俺の股間に触れた?

さっきは普通に体を揺すっていたんだ。ではないはず…。


股間を見たところ、見事に朝立ちしている。

に興味を持ったから触ったのか?


美咲だって年頃だ。あり得ない話ではない…よな?


…考えるのは後にしよう。俺は急いでリビングに向かう。



 既に母さんと美咲は、朝食を食べている。遅れながら、俺もいただくとしよう。


「美咲。昨日の翔はどうだった?」

昨日の俺の生活態度を確認する母さん。


「問題なかったよ。大人しくしてたし、私と同じ時間に寝たから」


「この時間に起きれたのは、美咲と一緒の時間に寝たおかげね。これからも続けて良いかしら?」


起こされたとはいえ、俺がこの時間に行動できるのは早く寝たおかげだろう。

俺がいつも寝る時間に寝たら、眠すぎてフリーズしたかもな。


「もちろん良いよ」


1日で済むとは思ってないので、この展開は予想通りだ。


「せっかく2人一緒に起きてるんだし、登校も2人でしたら?」


母さん…。どういうつもりだ?


俺と美咲は同じ高校に通っている。だから一緒に登校することはできるが、する必要はないな。罰に、登校のことは含まれていないし…。


「それ良いね! お兄ちゃん、良いかな?」

上目遣いで俺を観る美咲。


そんな目で観られたら、断れないじゃないか…。


「…わかったよ」


「やった♪」

笑顔で喜ぶ美咲。


コイツ、甘えん坊だったのか…。まだまだ子供っぽいところもあるようだ。



 俺と美咲の朝食後、着替えるために自分の部屋に入る。

自分の部屋なのに、着替えと私物を美咲の部屋に持ち込む時しか入れない…。


罰が終われば、こんな不便な思いとはおさらばだ。


登校準備を終え玄関に向かうと、美咲が待っていた。


「お兄ちゃん。一緒に学校に行こうね♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る