09話
「ねえ柚、柚は諒平のこと特にどうも思っていなかったの?」
「んー? あー、別にそういうわけじゃないけど……」
早い段階から夕貴ちゃんの気持ちを知っていたから影響を受けた形となる。
まあ、影響を受けたくせによく一人で近づいてみたりして矛盾めいたこともしていたけど特別な好意……とまではいかなかったかな、と。
そもそも諒平君が無自覚に夕貴ちゃんを優先していたのも大きかった、あの二人が先に友達になったわけだからおかしなことではないんだけどね。
「だけどおかしいよね、だって柚の頭は撫でたりしたくせにさ」
「頑張っている子ならそうしたくなるんじゃないかな」
というか本人がそう言っていたし、私以外でやれるような子がいなかったというだけだ。
最近知ったばかりだけど夕貴ちゃんにだけできないというそれも露骨というかなんというか、はははと笑うしかない。
「それよりちゃんとお掃除をしてください、先生が来たときに怒られちゃうよ」
「あ、諒平だ」
「ん? って、いないじゃん、いいから集中しなさい」
「はーい」
掃除もSHRも終わったから荷物を持って上の階へ、そうしたらまだ終わっていなかったから廊下で適当に時間をつぶした。
終わってからも他の生徒は出てくるのに二人が出てこないから教室へ突撃、関係が変わったというのにそれぞれでゆっくりとしているだけだった。
「諒平君、いいことを教えてあげるよ。夕貴ちゃんがしているあの本を読むという行為は単純にそうすることが好きだというのもあるけど本当のところを隠すためでもあるんだよね」
「それだと滅茶苦茶隠したいことだらけになってしまうぞ」
「だからそうだよ、なので気にせずに行きましょう」
いつも腕を掴まれて連れて行かれる身だから今度は私の番だ。
「ゆーきちゃんっ、諒平君が来たよっ」
「ふぅ、それは見れば分かるわ」
「じゃあ後は任せたよ、私はこれで~」
廊下で待っていた朝隅君に行こうと言って歩きだす。
「遠慮しないようにね」
「遠慮? しないよしない、というか性格的にできないから」
「ならよかった、あ、用事を思い出したから行くね」
「うん、また明日ね~」
うーん、もっと分かりやすくあの二人の役に立ちたい。
でも、私があの二人の側にいると二人はゆっくりと過ごせないわけで、かなり難しい問題だった。
変に抵抗をせずに諒平君が受け入れたのはいいものの、多分あれだと夕貴ちゃん的には物足りない。
「うわーん、どうすればいいんだ~」
付き合ってからもこちらをもやもやさせるなんて困らせる天才だった。
だけど結局本人達が上手くやるだろうから普通にいつも通り近づこうと決め、寒いから家まで走ったのだった。
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