第六世界・「ベビー・ハート・アタック Part1」
────時刻は15時37分。
5mはあるだろうという大きさ、三人はそれを見上げている。
三人の前に四つん這いの巨大な赤ん坊はヨダレが垂れる口を
「ンンンばばぶぅ〜ッばぁぁぁぶぅぅぅ……。」
その声を聞いていた
その地面には何か異様な液体が、プスープスーと音を立てて滴り落ちていた。
「……このヨダレ…『強酸』か……!? ヨダレの付着したアスファルトがドロドロにクソ溶けてやがる!!」
その口からはパサパサと白いチョークの粉のようなものが、声を出す度に舞っていた。
「…わ、我はただの抜け殻に過ぎない……お前らに放った弾丸、『
『ミランダ・ド・ドウロ』と名付けられた巨大な
この怪物は喋れないところを見ると知能は本当に赤子のように低いと見て取れるが、どこか醜悪なオーラを放っている。
ヴェントットはこの怪物『ミランダ・ド・ドウロ』を見ながら
その声からは困惑が感じ取れる。
「ブラザー…そう私の憶測ではあるが、アイツの取り込んだ『複数の欲望』や『協力に願われた願い』は、ほぼ全てあの赤ん坊に注がれたんだろうな……だからきっと……」
ヴェントットはそう言うと懐からとても小さなリボルバー、『
しかし、雷のような轟音と共に音速で放たれたその弾丸は、『ミランダ・ド・ドウロ』の額に着弾するも、小さな円板形、つまりフリスビー状に潰れてポロリと地面へ落ちた。
その弾丸の着弾地点である額を見ると、なんと傷一つ着いていない。焦げた跡も煙も立ってはいなかった。
ヴェントットは『
「……このように、あの『
それを聞くと
その『
「そらよっ!!!」
これは
「……一か八か…三番、『
「あぶあばぶ。」
その爆発は『ミランダ・ド・ドウロ』の頭全体を包み込む。
少しではあるが、四つん這いの『ミランダ・ド・ドウロ』を右へよろめかせることに成功した。
しかし、その爆発による煙が晴れると、そこには『無傷で火傷跡もないミランダ・ド・ドウロ』がそこに現れた。
「
『
「スゥゥゥゥウウウウウウウゥゥ〜……。」
『ミランダ・ド・ドウロ』は数秒をかけてめいいっぱいの空気を口の中に蓄えると、せっかく溜めたその空気を一気に三人へ向けて吹き出した。
「ぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ!!!」
その吐き出した息は三人の髪の毛と
この場にいる人間は、この怪物が本当に何がしたいのか分からなかった。
なので、ただその息に吹かれながら『ミランダ・ド・ドウロ』を見つめるだけだった。
「……クセェな……クソくせぇ…息が……。」
……しかし、
「てかやっと…動けるようになったか……な…??」
突然、ジュウジュウという焼けるような音が耳に入った。
時国は何の音だろう、何が焼けているのだろうかと、興味本位でその音の方向、つまり、自らの左腕を見てみると、そこには異様な光景があった。
なんと、時国の左腕の袖が、『消えていた』のである。
このジュウジュウという音はなんの音なのだろうか。そんな事を考える暇もなく、その光景を見た時国は驚きのあまり二人に向けて叫び出した。
「う、うぅおおおぉお!? そ、袖が、スーツの袖が消えてるぅううぅ!? て、てかなんなんだこれぇ!!」
それを聞いた二人も異変に気がつく。地面のアスファルトやヴェントットが身につけていた指輪が無かったり、、トレンチコートに丸い穴が空いていたりと、本当に異様な光景だった。
それを人差し指と親指で擦り合わせたり開いたり閉じたりしていると、ある一つの考えが
(ぬるぬる……なんだこれ…これはまるで『石鹸』のような……目に見えなくて、ぬるぬるしててあの化け物の口から出てきた……はっ!!!)
「解ったぞ!!あのクソッタレはただ息を吸って吐き出した訳じゃない!! 『強酸』だ!! あのクソ野郎は透明の強酸を空気とともに吐き出していたんだ!! 透明だから見えないし、付着しなければこちらも気が付かない!!」
それを聞いた時国は、急いで喫茶店の中へ入った。一方ヴェントットは、『酸の息』が吹き荒れる中、ヒョウ柄のコートの中に右手を突っ込んだ。
喫茶店のドアから覗き込む時国は、何やってるんだアイツと言わんばかりの目でヴェントットを見るが、次の瞬間、時国は驚愕した。
なんと、ヴェントットはにゅるにゅるとコートの中から『黒い傘』を取り出したのだ。
どう考えても入ることも出すことも出来ないそのコートから傘を出したヴェントットを見た時国は思わず声に出してしまった。
「ヴェントット!? てかなんだよそれ! てかどっからその傘出した今!?!?」
ヴェントットは黒い傘をさすと、時国に返答した。
「あれ、お前さんにゃ言ってなかったか。このコートも立派な『武器』……『
ヴェントットはそう言うと、さしている傘を指さして話し続けた。
「そして! 今さす傘は『
ちゃっかり宣伝をしたヴェントットは、傘をさしながら
「おいブラザー、どうやってこの赤ん坊を倒すよ。」
「さぁね。あんな頑丈なやつ、どう倒せと。酸に耐性があるのか身体は溶けてないし、爆発も最新の弾丸も効か……」
そして何を思ったのか、考えがあるのか。ニヤリと笑いながらヴェントットと時国に向けて叫んだ。
「おい、一つアイデアを思いついた。ほぼ賭け、予想だけどやる価値はあるぜ!!」
ヴェントットは不思議な顔をして答えた。
「ブラザー、何か策があるんだな? そいつは一体……?」
しかし、
「……あの赤ん坊を、『
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