35話 抑える術
プリシラを見失った遥は総合案内所に来ていた。
「わかりました。従業員向けに放送します」
「よろしくお願いします」
見かけたらすぐに女性店員に引き留めておくように言ってもらい、総合案内所に連絡してもらうようにお願いした。闇雲に探し回るよりは効果があるだろうと思ってだった。探すのを手伝ってもらうためにまさか迷子案内の放送を子供のいない自分がお願いすることになるとは思わなかった遥。しかもお母さん宛てではなく店の従業員向けだ。
早めに探し出さなければ何をしでかすかわからない爆弾だ。周りに協力を求めざるを得なかったのだ。だが、時すでに遅しだった。
ドオオォォォオン!
飲食店街のほうから大きな音が響いてきた。遥はすぐにプリシラの仕業だと察した。そしてどこにいるのかもなんとなく察した。驚いている従業員にアリスバーガーがあるかどうかを尋ねる。
「この建物の中にアリスバーガーはある!?」
「え…ありますが……」
「わかったわ!」
すぐに飲食店街へ向けて走り出す遥。
(なんで気づかなかったのよ! プリシラが今一番興味を引いているものがここにもあるじゃない!)
走りながら自分に悪態をつきアリスバーガーへと向かう。道中何人かが逃げてきた。確実にプリシラが何かをやらかしたことがわかり焦る遥。
アリスバーガーに着くと案の定プリシラがいた。店内は机と椅子が少し散乱しており壊れている机や椅子もあった。プリシラは壁際で一人の男性を鈍い音を響かせ殴り続けている。そのすぐ横にはダークバインドで拘束されて苦しんでいる男が一人いた。
「た…たすけ! ……てく……れ……もう! ……やめて…くれ!」
殴られながらも男性が止めるように求めるがプリシラの攻撃は速さを増していく。手加減して殴り感覚が麻痺してきたところを見計らい意識を失わないように治癒魔法で治して再び殴り続けることを繰り返していた。倒れることすらも許されず一方的にただ殴られ続ける男性の精神は恐怖で占められていた。
現場に来た遥は困惑し数秒動けないでいたが、、我を取り戻しプリシラに殴るのをやめさせるために駆けだした。
プリシラを力で抑えるのは不可能だと遥はわかっている。だが遥にはプリシラを止める術がある。
プリシラが何よりも優先するもの。それはおっぱいである。とりあえず顔におっぱいを押し付ければプリシラは止まるはずだと。
そしてプリシラを止めるために抱きついた。
「プリシラ! ダメ! もうやめて!」
「………遥」
「お願いだからやめて!」
「………仕方ない」
予想通りかはわからないが遥の要求通り殴るのを止めるプリシラ。だが横で拘束されている男性はそのままだったのでこっちも止めるように言うと素直にやめた。だが、逃げないように足だけは縛っていた。
殴るのをやめさせたので今度は何故こんなことになったのかをプリシラから聞き出した遥は大きくため息をついた。
「はぁ~~~……やりすぎよ………」
「………私は悪くない。悪いのはこの男」
「「ヒィ!」」
プリシラに睨みつけられ怯える二人の男性。どうしたものかと思っていたら誰かが警察に通報していたのかパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「………この音は何?」
「…警察が来たのよ。プリシラにわかるようにいうと騎士団が犯罪者を取り締まりにきたってところかしらね」
「………そう。もう連絡がいってたのね」
「大人しくするのよ。男性が来てもちゃんと答えるのよ」
「………私は悪くない。食事の邪魔をする獣以下の男たちが悪い」
「ヒィ! そうです! 俺たちが悪いんです!」
再び睨まれ怯える二人の男性。それを助けるかのように警察の男性が店内へと入ってきた。
遥が対応し事情を説明している。店員も事務所から出てきて事情を話していた。警察はプリシラと二人の男性にも話を聞いたが両者一点張り。プリシラは「悪くない」男たちは「自分達が悪い」としか言わなかった。埒が明かないため監視カメラの映像を確認すると店員の話した内容と一致した。
事情などは把握したが警察は非常に困った状況になってしまった。それはプリシラの存在だ。プリシラはまだ国賓として扱われている。正直なところ現場に来た二人ではどうすればいいかわからなかった。なのでプリシラのことは上に丸投げすることにした。現状はプリシラには何もなしとなった。
男二人はそのまま連行されていった。そしてプリシラと遥はそのまま帰ることになった。帰りの車の中では遥が不安を漏らしていた。
「帰ったら叱られるわよねぇ………」
不安を漏らしているがプリシラは知らんぷりだ。無表情なのに非常に機嫌が悪いのが伝わってくるため遥は居心地が悪かった。機嫌を取るためにアリスバーガーのドライブスルーに寄ってもらうと機嫌が良くなるのがわかった。今はおっぱい並みにアリスバーガーのハンバーガーが好きなようだ。
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