34話 プリシラ、キレる
プリシラは遥に付いていかずに神速で別の場所に移動していた。エスカレーターに乗る前にとある案内看板を見つけたのだ。その看板はアリスバーガーの看板だった。矢印方向が示されており向かっていた。つい最近食べたあのハンバーガーをまた食べたくて仕方なかったのだ。
脳内ではララベルが焦っていた。
(ちょっとプリ! ダメだよ勝手に動いちゃ!)
(アリスバーガーの看板があった。きっとこっちにある)
(あとで遥と来ればいいでしょ!)
(食べたい)
(もー!)
こうなったプリシラは止まらない。目的に一直線になったらもう止められないとララベルはわかっている。あとでどうやって遥に謝ろうか考えるのだった。
そしてアリスバーガーの店舗まで来た。店内はピーク前の平日なため数人いるくらいだった。だがそこへプリシラという今一番世間を騒がせているエルフが来て店内の数人たちは視線を奪われた。
プリシラは歩いてカウンターへと向かう。女性店員はいきなり現れたプリシラに驚いて口が開いたままだった。目の前にプリシラが来て慌てたように声を上げる。
「い…いらっしゃいませ! ご注文はお決まりですか?」
プリシラはカウンターにあるメニューを眺めて前に食べたものを探すがあれが一体なんだったのかを知らないことに気づいた。ただ美味しかったということしか覚えてなかったのだ。
喋らないプリシラに困る女性店員。焦りながらオススメのセットメニューを指差した。
「こちらのセットとナゲットの組み合わせがオススメですよ…」
「………じゃあそれにする」
言われるがままに了承するプリシラ。オススメは照り焼き風味のハンバーガーにポテトと飲み物と5つ入りのナゲットだ。飲み物はお任せすると支払いをする。つい先ほどもやった流れなのでカードを使いスムーズに支払いをした。
「こちらの番号札をお持ちになってお待ちください」
女性店員が1番の番号札をプリシラに渡す。普通ならここで番号札を持ってカウンターから離れるのだがプリシラは一向に離れなかった。
「あ…あの~……」
「………これを持って待ってる」
「あ…あちらのお席にお掛けになってお待ちください~……」
手で空いている席を示されたので番号札を持って移動し着席して待つ。きっとここで待っていれば持ってきてくれるだろうと店内を見渡しながら待っていると予想通り店員が持ってきた。
「お待たせしました~」
「………ありがとう」
店員にお礼を言って付属のおしぼりで手を拭いてさっそくハンバーガーの包みを剥がしていくプリシラ。勢いよく齧り付く。
(これも美味しい)
(前のよりは野菜が多そうだからさっぱり食べられそうかなぁ)
(シャキシャキした野菜と肉のソースが良い)
諦めたララベルに感想を言いながら食べ続ける。時にはポテトを食べて飲み物に口をつけて食べているとナゲットに目がいった。まだ食べていないと思い手に取り口に運んだ。
(これは………肉)
(空いてない小さい箱があるよ。味が薄いんならそれが何か関係あるんじゃない? ていうかソースって書いてあるよ)
ララベルの言う通りソースと書いてありソースが入っているであろう小さな箱が置いてあった。手に取るがどうやって開ければいいのか二人にはわからなかった。ソースと書いてある面を見ても裏を見てもどうすればいいのかわからないプリシラとララベル。
(…ナイフがいる?)
(この世界便利なのがいっぱいだから道具なしで開けられるんじゃない?)
(最悪風魔法で………)
(最悪それだね~)
店員に聞くと言う選択肢はない二人。だがプリシラを見ていた先ほどの女性店員が歩いてきてソースを開けて食べ方を教えてくれたのだった。お礼を言ってさっそくナゲットにソースをつけて食べる。
(これも凄く美味しい)
(それソースが美味しいんじゃない?)
ララベルのツッコミを無視して夢中で食事を続けるプリシラ。
プリシラが夢中になっている中、店内にいかつい派手なスーツを着崩したガラの悪い男性が二人入店してきた。片手にはビール缶を持っている。カウンターに向かって歩いていると彼らはプリシラを発見した。
「お! こんなところに噂の美人エルフがいるじゃねぇか! ヒューついてるぜ!」
「マジ美人っすね兄貴!」
「一緒に遊びにいくか! いくぞ!」
「うっす!」
すでに酔っ払っている二人はプリシラをナンパしにいく。テレビでもネットでもプリシラの強さは大々的に扱われていて誰もが実力を知っているはずだった。特に自衛隊との模擬戦は衝撃だった。しかし二人はあれを信じていなかった。酔っていることもあり自分の欲を満たすことしか考えていない。
「よーエルフのネーちゃん。俺たちと遊びに行こうぜ! 楽しいところに連れてってやるからよ!」
「気持ち良くなれるぜぇ~!」
下品な言葉をプリシラに浴びせる二人の男。店員は不安な眼差しで見ている。店員の一人は警察に連絡しようと後ろに下がっていった。
一方、男二人に声をかけられたプリシラはハンバーガーに夢中だった。意図して男二人を無視しているのではない。ハンバーガーに夢中で気づいていなかった。
「おいおい無視はひどいんじゃねぇかネーちゃんよ。傷つくぜ」
「いいから行こうぜー!」
それでもまったく気づかないプリシラ。プリシラにとってアリスバーガーはそれほど衝撃的な味だったのだ。ハンバーガーを一度置いてナゲットを食べ始めた。
男たちはさらに無視されたことに激昂した。
「いい加減にしろよオラァ!」
怒鳴りながらプリシラの前にあるテーブルを蹴り飛ばした。当然テーブルの上に置いてあったハンバーガーも一緒に飛んでいき床の上に落ちてしまった。それを見てプリシラは固まってしまった。
「おーいネーちゃんよ。許して欲しけりゃ股開きな」
「おとなしくしておいた方が身のためだぜぇ」
自分に声をかけられていることに気づき、大事なハンバーガーを台無しにされたことにプリシラは激怒した。次の瞬間、男たちに顔を向けると店内はプリシラの殺気に包まれた。
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