28話 渋谷ダンジョン最下層ボス戦
最下層ボスのいる30階層に向かう道中プリシラが情報を遥に確認する。
「………遥。ここの最下層ボスの情報はある?」
「あるわよ。複数体出てくるみたい。ミノタウロスが3体にオーガキングですって。オーガキングは最下層ボスだからかなり強化されているみたいだから気をつけてね」
「………問題ない」
30階層についてボスフロアを目指す。さすがに最下層の魔物となると一撃で倒せる魔物は少ないがプリシラの相手にはなっていない。魔法も駆使し一体ずつ確実に倒していく。
そして最下層ボスフロアの入り口前まで来た。
「ここみたいね。ここまで来ちゃったけど、神様に帰れるかどうか聞くのが目的よね?」
「………うん」
「さっきも聞いたけど一人で大丈夫?」
「………問題ない」
「任せるわ。早く倒してよね! 私何も出来ないんだから!」
「………大丈夫」
遥はずっとプリシラの作った結界に座っている。結界で覆われているため出ることも出来ない。プリシラがピンチになっても何も出来ないのだ。
「………じゃあ中に入る」
「いつでもいいわよ」
最下層ボスフロアの扉を開けるとサッカーグラウンドの半面ほどの広さの部屋だった。高さは30メートルくらいはある。
その中央に強化されたオーガキングとミノタウロス3体がいた。オーガキングは強化されているからか8メートルくらいの大きさがあった。普通のオーガキングは5メートル程度だ。ミノタウロスも強化されているからか道中の4メートルほどの個体と違い6メートルくらいはあった。オーガキングとミノタウロスは大きな斧を持っている。
入ってきた扉が閉まりミノタウロスが動き出した。それと同時にプリシラもミノタウロスに向けて走り出す。
三体で向かってくるミノタウロスの二体を魔法で足止めする。
「ダークバインド」
闇魔法の敵を拘束する魔法で二体の足を絡め取り転ばせる。向かってくる一体に雷魔法を撃った。
「ライトニング」
鋭く強力な雷魔法がミノタウロスに直撃し動きが止まった。すかさずプリシラは追撃する。
「ピアッシングレイ」
光の光線を飛ばすと光は貫通し分散して他方向に飛んでいく。転んでいるミノタウロスには当たらなかったが後ろにいるオーガキングへの牽制になっていた。ピアッシングレイを受けたミノタウロスは光の粒子となって消えた。
転んでいるミノタウロスをさらにダークバインドで腕と足を地面に拘束する。プリシラは飛び上がり上空から魔法でミノタウロスの頭目掛けて魔法を撃つ。
「ストーンジャベリン」
地魔法で作られた複数本の槍が二体のミノタウロスの急所に刺さり光の粒子となって消えていった。あっという間に三体のミノタウロスを倒してしまったプリシラ。残りはオーガキングのみである。
オーガキングはピアッシングレイの牽制を受けていたが体制を立て直してた。ピアッシングレイはほとんどダメージを受けていない様子だった。プリシラ目掛けて走り出し、大きな斧を振りあげて勢いよくプリシラ目掛けて振り下ろした。
斧は地面に叩きつけられ埃が舞った。
「プリシラ……」
遥は不安だったがすぐに平静を取り戻した。プリシラの速さからしてあの攻撃に当たるわけはない。そして何よりも遠くから見ていたのでプリシラが避けるのを見た。土埃で見えないがプリシラはすでに攻撃に移っていた。
「剛雷聖拳」
身体強化で力を強化してオーガキングの足の脛に攻撃を加えていた。ミスリルゴーレムに比べればオーガキングの防御力は低いため足に大ダメージを与えたようで攻撃した箇所は骨が折れたのか曲がっていた。
オーガキングは足をやられたためバランスを崩している。さらに反対側の足の脛に同じように攻撃を加えて骨を折った。両足をやられ膝立ちでプリシラを補足し大斧を振り回すがプリシラの速さを捉えることは出来ず当たらない。
「ライトニング」
強力な雷魔法で撃ち動きが止まったところに後頭部から攻撃を加えた。
「剛雷聖拳」
ライトニングに加えて大ダメージを受けたオーガキングはそのまま倒れ込み動かなくなり、少しずつ光の粒子となっていった。
「…相変わらず引くほど強いわね。攻撃も多彩だし、何より速過ぎるわ」
プリシラの戦闘を見ていたが遠くからでも動きが速すぎる。自分の戦闘の参考にならないかと思ったが多彩な攻撃と速さで参考にならないとわかった。
「………終わった」
プリシラが遥の元に来て声をかける。
「お疲れ様。もう結界解いて大丈夫よ。あとはドロップアイテムと神様が出てきて願いを聞いてくるだろうから」
遥は他のダンジョンで最下層ボスを倒した経験があるため、倒した後の流れは知っている。
オーガキングが完全に光の粒子となって消えた。その場所の少し前に今度は光の粒子が集まってくる。光の粒子は人型となり徐々に光が収まると、そこには一柱の美しい女神が顕現した。銀色の肩まで伸びた髪に人形かと思うほどに整った顔立ちに良いスタイルで白い薄布一枚を羽織った格好をしている。
その女神が口を開いた。
『ようこそ。異界の者よ』
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