第2話「現実」


―すごく現実的な夢だった。


目が覚めた。こっちが本物の目覚め。なんだか幸せな夢だったな。

そんなことを思いながら、いつもの風景に目をやる。


1K7畳の白いフローリング。

一つだけある大きな窓を覆う赤いカーテン。

ぽつん、と置いてある小さなテーブル。

部屋の大半を占めるシングルベッド。


なんだか寂しい部屋。

さっきまで見ていた夢が幸せすぎて、この現実が空しく感じた。


仕事に行くための準備をする。


自分を好きになるための少し濃い目のメイクとお洋服、毎朝の日課のブラックコーヒー、少し肌寒い1月の気温。


全部、今日も一緒だな。


つまらない日常を繰り返しているのだから、私も私でつまらない人間だななんて思いながら、今日も準備を終えて外へ出た。


ついさっきまで見ていた夢を不思議と思いだしながら歩く。


本当に子どもを産んだ気分になった。

あの幸福感と達成感と、顔のぼやけた男の人の優しい声。

何故か嬉しい気分になった。


今日も生き延びようかな、なんて。

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