夢のオハナシ

@saaya0119s

第1話「夢」


目を開けた。


なんだろう、すごく疲れている身体と達成感と安心感。


白い天井。

左側にある大きな窓が開いている。

気持ちのいい日差しと心地よい風が私の頬を撫でている。気持ちいい。


私はベッドの上にいるらしい。


窓の隣が私のベッド、その私の右隣にはデニムシャツを着てデニムを履いた、白くぼやけて顔の見えない男性がいる。


どれだけデニムが好きなのかしら。


男性の後ろには部屋の入口であろう扉。

その扉の前には、薄ピンク色の看護服を着た看護師の女性が微笑んでいる。

看護師の腕には何かを包んだ毛布のようなもの。

壊れ物を扱うように、大切そうに抱きかかえている。


デニムに身を包んだ、白くぼやけて顔の見えない男性が私に一歩一歩と近づいて。


「頑張ってくれてありがとう。本当に。お疲れ様。」


そう言って私の頭を撫でてくれている。


あぁ。そっか。

私、今さっき子供を産んだんだ。

ぼやけた頭がはっきり鮮明に今の今までの出来事を映しだす。


看護師が私の胸のあたりに抱きかかえていた毛布の中のものを静かに置いて「可愛い男の子ですよ」と優しく教えてくれる。


小さくて温かくて、いい匂いがふわっと香る。

無意識的に言葉が口に出た。


「生まれてきてくれて、頑張ってくれてありがとう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る