17 モールヤーンの実像と幻想

 こんにちは。


 やっぱりまだ覚悟が出来ない。なので、違う事を書きます。


 モールヤーンって知ってますか?毛糸の種類ですが、モールのように糸に毛束を撒きつけてある毛糸で、とにかく肌触りが良いのです。

 先日、使わない毛糸をまるっと一箱買った中にモールヤーンが入っていまして。ちょっと私が作る商品にするには使いにくい色でして。なので家で自分が使うもので作ろうと思いまして。そして作ったのが、先日書いたナンチャッテ手袋です。


 ほんと手触りがいいし温かいし、ウールじゃないからチクチクしない。とっても役に立っているのですが、とにかく編みにくい。見た目から想像できないほど編みにくいのです。

 毛糸は太い糸ほど進みが早いし、編み目もわかりやすい。だから太い毛糸ほど初心者向き。しかも柔らかいし伸縮しないし肌触りが良いし、めちゃくちゃ編みやすそうな顔をしているのです。が、大間違い。

 実際はモールなので、実像が無いのです。毛糸と言うけれど、あれは糸です。モールたる毛の部分は幻想。糸に扱いにくい幻想を巻き付けている代物。幻想を仮定として認識しながら編まないといけない、高等技術が必要な毛糸でした。

 とは言ってもそれになりに手ごたえがあるだろうから、編めるんでしょ?と思うじゃないですか。私もそう思っていた事がありました。実際はそう簡単には編ませてくれない。編み棒とモールヤーンでは良く滑るのですが、モールヤーン同士だったり、それが接地面がねじるていたりすると滑らない。まるで正絹のようにギュッと止まってしまう。なので少し力を加えて引っ張るとモールの幻想が消えて糸になってしまう。

 また対編み棒では滑るので目を落としやすい。そして編んでいくと別珍のような表面になるから、編み目が区別しにくいのです。

 

 それでもどうにか編んだんですよ。なるほど、モールヤーンの攻略方法はこれだな?と途中でコツがわかって来たし、そもそもが太い糸なのであっという間に編めてしまいました。出来上がったものも、見た目はそんなに悪くない。これは次に編んだら完全攻略だな?と思っていたのですが……。まだモールヤーンのことを一つも分かっていなかった。


 使えば使うほど、最初と最後の糸を針で他の編み目に絡ませて処理しているのに、それが解けてくるのです。編んでいる所が解けてくることはないのだけれど糸の端がニョロリと出てきてしまう。

 そして、何度か使うまではで来なかった糸のたるみがそこら中から出てきたのです。編むとき、そんなにたるませて編んでいるはずないと思うのだけれど、実際はなぜかたるんだ糸が出てきてしまう。しかも、糸自体に伸縮性が無い上に糸同士は滑りが悪く譲り合わないから、いつまでも馴染まなくて、たるんだ輪っか状の糸がずっとピロピロと出たまんま。


 まぁね、家でパソコンを打っている時と就寝時くらいにしか使わないので別に見た目がどれだけダメダメでもいいのです。使い心地は良いので。それでも攻略できないと悔しいじゃないですか。

 ネットで「モールヤーン 編みにくい」で検索すると、けっこう色々と出て来まして。でも「編みにくいと言われていたけれど大したことなかった」とか言っている方も結構いて。でも彼女たちは、きっとまだ知らないのです。使用した後、隠れていた粗が出てくる事を……


 しかし、作る小物を想像して材料を買いそろえた状態で知ることにならなくてよかった。不幸中の幸いというか、シンプルに幸いですね。モールヤーンは何度も作り直すと糸の幻想部分がよれて使い物にならなくなるから、材料費が無駄になってしまう所だった。


 なんでも自分でやってみて、使ってみないと分からない事だらけですねぇ。前職の上の人は、自分のアイデアで商品化させたものを「良いものを作ったから売れ」と無理矢理納品して来たけれど、使う人の気持ちになって作られていないので全く売れなかったなぁ……自分で使って見なかっただろうし、子供が「良い事考えた~♪」としょうも無い事を思い付くレベルの机上の空論で作ったんだろう。太鼓持ちのイエスマンしか周りに置かない会社はそうなる。


 とりあえず、まだまだモールヤーンの在庫はあるんです。また何か作って実像と幻想を攻略したいと思います。



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