第70話 『隔たり』
砂漠をひたすら無言で歩く……後ろではリリアとルークが並んで歩いている。ほぼ無理やりにあの場から立ち去った俺はあわせる顔もなく一人空しく先頭を歩いていた。
しばらく歩いていると遠くから何か声が聞こえる……。もしかして追われていたか?
「……ーい! おーい!!」
徐々に聞きなれた声だとわかり、すぐさま声のするほうへ振り返る。
「ミント!? どうしたんだこんなところで!」
「ふぅー……ぼ、僕を置いていくなんて。君たち酷いんじゃないの」
「クゥー!!」
「お別れしたんじゃなかったの!?」
「な、何を言ってるんだよ。僕は出掛けてくるっていっただろ」
「もしかしてお前の用事って…………」
いや、わからないがなんとなくそんな予感がする。
「なんてことはないよ、ちょっと遠くまで行ってきただけ」
「ライムはなんていってた?」
「戻るなりうるさくてさ~、いつの間にか僕が女王様の護衛に推薦されてるし…………あっ」
ミントはいつも通り答えただけだったようだが、本人はたぶん黙っておきたかったんだな。
「ははははは! それで、許可はもらえたのか?」
「もう……秘密にしておこうと思ったのに。女王様にはちゃんと許可をもらってきたよ、ライムのことも任せておけって」
「あの女王様がいったのなら安心だな」
「それで――遅くなっちゃったけど僕も君たちの旅に混ぜてくれる?」
「あぁ、ただ危険なことに巻き込まれる可能性だってある。それこそ今回以上のことだって」
「自分の身くらい守れるし君たちを助けるくらい訳ないよ。それに君といると嫌でも退屈しなそうだし、ついでに美味しいものがたくさん食べられるからね」
なるほど、大半は美味い飯があるからついていきたいわけか。理由はどうあれミントの魔法はかなり強力だ。恩返しもあるし美味い飯をいっぱい食わせてやろう。
「頼もしい限りだな、それじゃあ改めてよろしく頼むぞ」
「やったー! ミント、よろしくねー!!」
「クゥー!!」
「ちょ、ちょっと近いって!」
リリアとルークにもみくちゃにされたミントは避難するように俺の横に飛んできた。
「ふー……それで、今どこに向かってるの?」
「あぁそれなんだが……」
俺はリリアを見るとリリアは目を伏せる。別に悪いことをしてるわけでもないのに、俺が気を遣わせてしまっている状態だ。それをみたミントは何か察したのか俺たちの間に入った。
「ちょっと、僕がいない間に何があったのさ? 確かあそこを出る前にフードの男と話をしたんだろ?」
「クゥー……」
「まったく、僕がいないとまともに会話もできないのかい? 何があったか教えてよ」
「あ~それはだな……」
俺はミントにさきほどフラードから聞いた話を伝えた。リリアはきっと両親に会いたいだろう……いや、そのために旅をしてるんだ。
俺が邪魔をする権利なんてない……でも、だからと言ってここで無責任に別れるわけにもいかないじゃないか……また危険な目にあうかもしれないのに。
「なるほどねぇ~」
そういうとミントは頷きリリアの元へ飛んでいった。
「ていッ!」
「きゃッ!? な、何するのよ!」
「君はバカなの? なんのために特訓したのさ、言いたいことがあるなら言わないとわかんないだろ」
「あっ……でも」
「も~これだから人間ってのは! 君は両親を探したいんだろ?」
「う、うん……」
「それで、君のほうは危ないことは極力避けたいと」
「あ、あぁ」
「じゃあ話しなよ、思う存分好きなだけ。それでも決まらないなら別れて旅をすればいいじゃん」
そういってミントはルークを連れ出し離れた場所で遊び始める。残された俺たちは、なぜか初対面のときよりもぎこちなかった。
何を話せっていうんだよ……。リリアは必ず両親を探しに行くはず、でもそれは
沈黙が続き、そして先に口を開いたのはリリアだった。
「あ、あのね。実はレニ君が町に行ってるとき、ルーちゃんと一緒にミントから戦闘の訓練をしてもらったの」
「そうなのか……それでどうだった?」
「色々課題ができたよ。ミントにもよくそんなんでここまでこれたねっていわれちゃった」
そういえば俺たちはソフィアさんから基礎を教えてもらっただけでまともに一緒に戦ったのは教会のときだけだ。それ以外はなんだかんだでやってこれただけで……。
「リリアもソフィアさんから少し手ほどきを受けたくらいだったよな」
「うん、それで私思ったの。今までレニ君に頼りっきりで一人じゃ何もできてないなって」
「いや、今回の件は俺が悪い。俺がもっと早く動いていればあんなことにはならなかったんだ、本当にすまない……」
俺だけがあの中で唯一、最後まで動けずただ眺めていることしかできなかった……。今思えば予言の本の力だったのかもしれないが、心のどこかで『なんとかなるだろう』そう思っていたからあんな力に負けたんだ。
そして……いざ危なくなったら
たった一瞬――神様が振り向いたから助かっただけ、それだけなんだ。
「でもレニ君は頑張ってくれて…………あっ、ごめん……」
よっぽど俺は酷い顔をしていたのかリリアは小さく謝る。おっさんが少女に気を遣わせる、か……まったく、転生したからって何も成長していないとは……こんな歳で子供に迷惑かけてるようじゃダメだな。
「気にするな、それよりリリアの両親を探しに行こう。確か水の都に行けって言ってたから場所もなんとなくだが聞いている」
「でもレニ君は」
「大丈夫、俺も職業が新しくなって――はいないか。まぁスキルを使えるようになったからもう少し役には立てるはずだ」
「そ、そうなの? あとで教えてくれないかな?」
「あぁ、とりあえずミントとルークに決まったことを伝えてくるよ」
水の都へ行くことを伝えるとミントは魔法で移動用の獣を作る。俺たちは獣の背に乗ると広大な砂漠を進み続けていった。
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