第66話 『特訓開始①』

「で、いったい何をするつもり?」



 私はレニ君を見送るとミントとルークを集めた。私にはまずやることがある……それは。



「特訓をします!」


「これはまた急だね」


「クウゥ?」


「レニ君の隣に立つには今の私たち・・・じゃ足手まといになる。だから特訓するの!」


「たちって……それ僕もはいってる?」


「クゥ!」


「さぁ~やるわよ! まずは攻撃を避ける練習から――ルークはこっち、ミントはそこから魔法で攻撃!」


「ねぇ聞いてる?」



 私とルークがミントに向かい合うように移動する。合図をだすとミントは魔法で作った砂の弾を発射した。



「きゃッ!?」


「クウウゥ?」



 思ったより速い速度に反応できず当たってしまった。幸いかなり柔らかく作られているため衝撃はあるが痛みはなく、ルークに関しては手ではたいたり、当たっても平然としていた。



「はぁ、こんなのも避けれないの……本番だったら死んでるよ? もっと集中力を鍛えないとダメだね。ルーク、君はもう少し避けるとかしたら? いくら体が頑丈だからってダメ―ジは溜まっていくんだから」


「む~っ……もう一回!」


「クゥクゥ!」



 何度も練習を繰り返し砂まみれになり、なんとか回避の仕方、動きがわかってくる。ルークはすでにたくさんの数を避けていた。

 やっぱりドラゴンだけあって成長も早いし動きもすごい……。



「それじゃ次いくよー」



 そういうとミントは何やら砂の人形を作り出していく。



「はい、これを倒してみて」


「そういうことなら私に任せて!」



 私は杖を構えると魔法を使う。あのくらいなら一発で!


≪タカノツメ≫


 炎の爪が人形目掛けとび、そして当たる直前――人形は華麗に横に動き魔法を避けた。



「あっずる~い!」


「君は敵をなんだと思ってんの…………」


「もう一回……! きゃッ!?」



 魔法を使おうと構えた瞬間、砂の弾がぶつかり驚いた私はしりもちをついてしまう。今のはズルくない!?



「わざわざ魔法を撃つまで待ってくれる敵はいないよー。もう少し視野を広げて頭を使わないと」



 そういうと交代して今度はルークが攻めていく。だがルークの攻撃も華麗に避けて見せるとミントが大きく声を出した。



「速さはあるけど攻撃が単調すぎる、その尻尾は飾りかい」


「グウゥ……」


「ほらほら二人とも、よそ見してると」


「クッ? クゥウゥ!」


「わッ!? ルーちゃんごめん!」



 ミントの声に気づくと私はルーちゃんと衝突しそうになっていた。夢中になっちゃうとダメね……。その後も何度かチャレンジしてみるが、人形を倒すことはできずミントが町のほうを見る。



「時間切れだね」


「お~い、戻ったぞ~ってなんだ二人とも!? 砂まみれじゃないか!」


「だ、大丈夫! 砂遊びしてただけだから!」


「砂遊びって……」


「心配しすぎだって、いい天気だし気分転換に遊びたくもなるさ」


「そ、そういうもんなのか……?」


「クゥクゥ」


「それよりお腹も空いたしお昼にしようよ」


「あ、あぁそれじゃ今すぐ準備を」


「今度は私が作るから、料理のほうはまかせて!」


「そうか? それじゃミントは俺と片付けと準備を手伝ってくれ」



 顔と手を洗い、レニ君が出してくれた食材から何を作るか考えていく――暑いからさっぱりしたものがいいかな。でも栄養もほしいし、サラダにお肉を混ぜてみよう。



「ミント、これ冷たくできる?」


「できるけど冷やしちゃって大丈夫なの?」


「うん、最後に味付けするからやっちゃって!」



 ミントが料理を冷気でかこむ。冷え切ったサラダに調味料をあわせ味見をする……。うん、さっぱりしていて美味しい! これならレニ君も食べてくれるはず!



「完成~!」


「冷えた葉っぱ? 美味しいのこれ」


「クゥ?」


「それは食べてみてからのお楽しみだよ。さぁ、いただきましょう!」



 みんなが料理を口に運ぶと最初に反応したのはレニ君だった。



「お~さっぱりしてるけど食べ応えがある……肉の味もしっかりしてて美味しいよ!」


「ほんとだ、このスーッとする感じもこの暑さにはちょうどいいね」


「ククゥ!」



 やった、うまくできたみたいだ。みんなでゆっくり食べ終えるとレニ君が大きな木の実のようなものを取り出してきた。



「あ、それって!」


「クゥ!」


「みんな気に入ってたみたいだし買ってきたぞ」


「私は初めてみるけど……何かなそれ?」


「ココヤッシと言って中にジュースが詰まっているんだ。リリアにも飲んでほしくてね。ミントお願いできるか?」


「そこに置いてー」



 レニ君が置いた実をミントが上だけ綺麗に切り取る。レニ君はそれに草の茎を差し渡してきた。



「はい、どうぞ。これを使うと簡単に飲めるよ」



 言われた通り草に口をつけ吸ってみると、すっきりとした甘いジュースが口いっぱいに広がる。



「ん~すごく美味しい!」


「よかった、気に入ってもらえて」


「ねぇ僕たちにもちょうだいよ」


「慌てるなミント、こいつでちょっとデザートでも作れないかと思ってな――町のほうでそいつを使った料理もいくつかあるらしい。もう少し調べればわかりそうなんだが」



 む! レニ君がまた町に向かうならその間に特訓の続きもできるし、デザートと料理という楽しみも増える!



「それじゃあレニ君はもう一回町に行ってきたらどう?」


「でも……また留守番をしてもらうことになるぞ」


「大丈夫! 私たちも色々やることがあるし」


「クゥ!」


「ん? ルークもか? 何かやってるなら俺も手伝うが」



 まずい、なんとかして誤魔化さないと……。急いでミントに頼むように目を配る。



「ぼ、僕がいるから大丈夫だよ! 水浴びして体の汚れも落とさないといけないし、女の子は色々大変なんだよ。ルークも一緒に汚れてるからあとで綺麗にしないとね! ほら、僕がいるから安心して行ってきなって!」


「あぁそういうことか、気が付かなくてすまん。それじゃあ俺はまたあとで町に行くことにするよ。日が暮れる頃に戻るからね」


「うん、ありがとう」



 危なかった……ミントに何やってるんだよという顔で見られたため苦笑いして返す。食事も終わり一息つけるとレニ君はまた町へと向かった。



「デザートって絶対美味いよね……しかもあれを使った料理か、楽しみだなぁ」


「そうだね~……って、それより今は特訓の続き! さぁ始めるわよ!!」


「クゥ!」

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