素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。～趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました～

第65話 『変化』

　目を覚ますと空はすでに薄っすらと明るくなっていた。ミントのやつ、俺を起こしてくれなかったのか……いや、早めに寝たくせに起きなかった俺もいけないか……。

　寝ぼけ眼で周りを確認すると寝ていたはずの場所にリリアがいない。

「あれ……おい、リリアはどこだ!?」

「クゥ～」

「起こしちゃったかな、ごめんね」

　振り返るとそこには髪を結び手に着替えを持つリリアがいた。髪型が変わったからか雰囲気が変わったような気がする。

「リリア、その髪……」

「あ、これ？　ちょっと変えてみたの、変かな？」

　俺に見せるように頭を動かすと、ピンク色に混ざり黒髪がみえる。完全には治らなかったのか……。明るく振る舞ってはいるが、髪は女の命ともいうし俺がもっと早く助けていれば……。

「いや……そんなことない、似合ってるよ」

「ほんと？　ありがとう！」

「ところで、何をしていたんだ」

「服が汚れちゃってたから洗ってたの。箱にかけておいたんだけど砂漠だからかあっという間に乾いてね」

「そうか……」

　何はともあれ無事でよかった……。気持ちを落ち着かせ、軽く体をほぐしていると徐々に陽が出始めミントも起きてくる。

「ふぁ～……おはよ～～～」

「よぉ、ミント。俺を起こせっていったよな？」

「うわッ!?　ぼ、僕は起こそうとしたよ！　だけどあの子がもう少し寝かせてろっていったんだ！」

　そういうとミントはリリアのほうへ逃げていった。

「あ、おはよう」

「クゥ～」

「おい、あいつを起こさなかったのか!?」

「私ずっと眠ってたからみんなの変わりに起きてようと思って……ダメだった？」

「別にかまわないけどそれをあいつに説明してやってよ、僕が怒られちゃう」

「あぁ、そっか！」

　リリアはミントに謝り急いで俺の元に走ってくる。会話は聞こえていたからわざわざこっちにくる必要もないんだが。

「レニ君、ミントは」

「……聞こえてたよ。ミント、俺の早とちりだった、すまん」

「べ、別にそんな謝ることじゃないし気にしないよ」

「クゥー」

　俺はミントに頭を下げたがなぜかよそよそしい。なんだミントのやつ？　いつもなら『まったく、僕のせいにして……少しは』、とかなんとか愚痴の一つでもいうはずなのに。

「それより今日は何をするんだい？」

「そうだな……とりあえず全員の体調を確認したい、どこか悪いところはないか」

「私は大丈夫、ルーちゃんも元気だよ！」

「クルルル」

「僕もないよ――君は、もう少し自分の体の心配をしたほうがいいんじゃない」

「俺は怪我もないし大丈夫だ」

　ふむ、全員我慢してる様子もないし大丈夫そうだな。まぁ精神的にきてるものもあるだろうし無理はさせられないけど。

「よし、それじゃあ今日はこの国を出たあとについて話そう」

「三日後にフードの男と会うんじゃなかったっけ？」

「あぁ、予言の本について何か知っているみたいだから聞こうと思う。あとはここの王様に一言いってやる」

「それなら話を聞いてから出る準備をすればいいんじゃないの？」

「油断させて襲ってくるかもしれないから、前もってすぐに動けるようにだけは準備しておきたいんだ」

「考えすぎな気もするけどなぁ」

「何かあってからじゃ遅いからな。よし、とりあえず飯にするか」

　昨日の残りはないし何を作ろう……。とりあえず目玉焼きとソーセージ、それにトーストでもしてみるか。食材を揃えミントに火をつけてもらい料理を始めると少し離れたところでリリアがミントを呼ぶ。

「ねぇミント、ここの砂でテーブルと椅子って作れる？」

「ん？　そんなの簡単だけどどうするの」

「できればこんな感じで作ってくれないかな」

　リリアが砂に何か絵を描き、ミントがそれをみると頷く。

「わかった。それじゃいくよ――ほい、ほいっと」

　ミントが魔法を使いテーブルと椅子を作り出す。リリアはお礼をいうとそこに毛布を掛け、できた料理をテーブルへと運ぶ。全員分を並べるとリリアが嬉しそうに大手を振った。

「みんな、準備できたよー！　レニ君特製の朝ごはんです！」

「クゥ～」

「お～なかなかおしゃれにしたね。君、やるじゃん！」

　テーブルは毛布を掛けただけだが、隣に見えるオアシスがどこかレストランのような雰囲気をだしている。ルークは専用で作られた長い椅子に座ると、頭の位置がちょうどよくテーブルの上に出ていた。

「これならみんなで食べれるね」

「クルルルルル！」

「それより早く食べよう、もうお腹ぺこぺこだよ！」

「ははは、みんなで揃ってっていうのもいいな。さてミントも待ちきれないようだし食べるとしようか、いただきます！」

「「いただきます！」」

「ククゥ！」

　シンプルで簡単な味付けだったが、みんなが美味しいと言ってくれる。ただの朝食のつもりだったが……こういうのもいいな、さすがリリアだよ。

　特に急ぐ必要もないのでゆっくりしているとリリアが提案してくる。

「ねぇレニ君、旅に出る前に町でこの辺りの情報を集めておいたほうがいいんじゃない？　私はみんなに顔を見られちゃってるからいけないけど……レニ君なら一人でも大丈夫かと思って」

「確かにそうだが、こっちに何かあったとき危険だろう」

「ミントとルークがいるから大丈夫だよ。何かあったらすぐに知らせるから」

「うーん……二人はそれでもいいか？」

「それくらい大丈夫だって、今更ヘマはしないよ」

「クゥ」

　昨日町に行ったときは兵士たちは集まっていなかったしすぐに動きそうな気配もなかった。それにミントとルークがいれば、よっぽどでなければリリアに危険はないだろう。予言の本も壊したわけだし……。

　リリアの言う通り今のうちに情報収集をしておくべきか……あるのとないのとでは、注意すべきところも変わるからな。ついでに食料とアイテムも見てこよう。

　こうして俺は朝食を済ませると情報収集に向かった。