第15話 『報告①』
目が覚めると何があったのかははっきりと覚えていた。問題は何日寝て体がどうなっているか……。
恐る恐る体を動かすと半身に何か重みを感じる。まさか、リリアまた…………。
「クゥ……クウゥ…………」
目を向けた先ではドラゴンがスヤスヤと寝ていた。こいつ人の上で気持ちよさそうに……元気そうだな。
ゆっくり身体を起こすと扉が開かれリリアが入ってくる。
「あ、起きた? 体が痛いとかはない?」
ちゃんと休めていたのか顔色は前のようにひどくはない。
「すまん、また迷惑をかけたな……体は大丈夫みたいだ。それよりなんでこいつが」
「クゥ…………クッ?」
俺たちの声で起きたのかドラゴンは目を開けると大きなあくびをした。そして俺と目が合うと急に舐めてくる。
「うわ……っぷ!」
「ふふふ、その子もレニ君のことが心配でずっと離れなかったんだよ」
「そ、そうか。お前にも心配かけたな」
ドラゴンの頭を撫でると気持ちがいいのか甘えた声で鳴きながら頭を下げた。
「俺、何日眠ってた?」
「あの日から一日だから……今は二日目の朝だよ」
「今回は前ほど酷くはないようだな」
「そうだ、朝ごはん食べやすそうなの作ったんだけど食べれそう?」
「あぁ、ありがたくいただくよ」
「クゥークゥー!」
「大丈夫、あなたの分も用意してるから。ほらそこから降りて」
そういうとリリアの言葉を理解しているのかドラゴンはベッドからのそのそと降りた。
「話せるのか?」
「ううん、なんとなくそう言ってるのかなぁって……でもこの子、違うと首を振るの。賢いのかも」
ドラゴンだから知性が高いのかな?
俺の場合は明らかな意思を感じるが、これはたぶんテイムした関係だからだろう。
「クルルルルル!」
「もう、食いしん坊ね。すぐに持ってくるから二人とも待っててね」
リリアは嬉しそうに小走りで出ていく。
俺たちは二人と一匹で朝食を済ませるとリリアから話を聞いた。
「あれからすぐに衛兵が来てソフィアさんと
「それじゃあ作戦はうまくいったんだな」
タイラーさんは王様に知らせ裏の動きを探っていた。ここで逃がせばまた事を起こされてしまうから絶対に潰さないといけなかったらしい。
「レニ君が起きたら城に来いって言われてるけどどうする? 一応、三日過ぎても起きなかったら衛兵を送るって言ってたけど」
「いや、問題はなさそうだしすぐに…………こいつはどうするんだ?」
「クゥッ?」
問題あったわ、ドラゴンの子供とかどうすんだよ。いくら賢いからって留守番なんてやれるわけないし……。
「あ、それならソフィアさんがとりあえずこれを着せておけって」
そういうとリリアは部屋の隅に置いてあった皮のようなものを持ってくる。
ドラゴンに着せると翼が隠れ、上部がカバーのようになっていた。すぐに翼を広げようと思えば広げられる構造だ。
「冒険者の中にはモンスターをつれている人もいるから、翼さえ隠せればドラゴンとは思われないだろうって」
「どうだ、きつくはないか?」
「クルルル」
ドラゴンは翼を動かしてみせるが、特に問題はなさそうである。ん~ただこれだけってのも少し寂しいな……そうだ。
「俺の鞄もつけてみるか――――おし、これならどうだろう」
「わぁ、冒険者みたい!」
「クゥクゥ!」
見た感じ邪魔にはなっていないようだし
それに何もないより、商人のようにモンスターに道具を持たせておけば自然さがでるはず。
「それじゃさっそく、城に行こう」
* * * * * * * * * * * *
城に着くと俺たちは広めの部屋へと案内される。
「うわ~ふかふかだ~、お菓子もある!」
メイドさんも何人か待機しており何かあれば遠慮なくいってくれとのことだった。椅子に座るとメイドさんが紅茶をだしてくれる。
なんか待遇が普通じゃない気がするんだが……いや、一応客人だしこれが普通なのか?
「ありがとうございます。お前は何かいるか?」
「クゥクゥ」
「えっ、これが飲みたいって? ん~ちょっと待ってて」
メイドさんにお願いし少し広めの皿に紅茶を注いでもらう。
「ほら、熱いかもしれないから注意するんだぞ」
「クゥ!」
まぁ火を吹くドラゴンが猫舌なわけないだろうけど……ってふーふーしてるし! 俺たちを見て学んだのか?
メイドさんたちは俺とリリア、そしてドラゴンが一緒にふーふーしながら紅茶を飲んでる姿を見て驚いたり微笑んだり様々な反応をしている。
しばらく待っていると、リリアが少し俺を気にしながらメイドさんに小さな声で何かを訴える。メイドさんに案内されるようにリリアが出ていく。
それから少し経つとノックの音が聞こえ扉が開かれた。
「すまん、待たせたな」
そう言ってタイラーさんに続いてソフィアさん、そして王様が入ってくる。
「お邪魔しております、王様」
「よいよい、非公式の場じゃ」
「そうよ。それにあなたたちはこの国の英雄なんだから……ってあら、リリアちゃんは?」
「リリアはたぶん、お手洗いかな?」
そういってメイドさんをみるとちょっとだけ微笑み頷く。ソフィアさんたちはそれを見ると察してくれたのかすぐに話題を変えた。
「そいつがドラゴンの子か」
「まさかこのようなかたちで見ることができるとはのぅ……触らせてもらってもよいかの?」
「確認するので待ってください――なぁ、すまんが少し体を触らせてもいいか?」
「クゥ? クルルル」
ドラゴンは俺の言葉を聞くと鳴きながら前に出てきた。
「大丈夫みたいです、鱗が硬いので怪我だけしないように注意してください」
「わかった……お~なんとも例えようのない質感じゃ」
「なんだこりゃ、並みの剣じゃ歯が立たんわけだ」
王様とタイラーさんは少し観察するように触るとドラゴンに礼を言って離れた。
「人生で二度もないであろう機会をありがとう。しかし、ドラゴンをテイムするなどお主は相当な実力者であったか」
「そういえば、(元)神父でさえテイムできなかったのに、あのとき何をしたの?」
「あれは……親の鱗を使ったんです。魔力も相当あるみたいでしたし、もしかしたら親の匂いというか気配というか……そういうの、わかってくれるんじゃないかって。こいつには悪いと思ったけどあのときはそれくらいしか方法が思いつかなかったんです。もらった鱗も散って消えちゃいましたし」
「そうだったのね……でもあなたの判断は正しいわ。あのままだったらいずれ死ぬか、私が倒すしかなかった」
正直にいうとずるしたというか、騙した感じがして複雑だった。それにコイツだってそんな形でテイムされて本当は嫌だったかもしれないし。
「何はともあれ、お前はこの国を救った英雄ってことだ」
「そんな大げさな……タイラーさんやソフィアさんの助けがなければ何もできませんでしたよ」
「そんなに謙遜すんな。ソフィアはまだしも、俺なんか裏の連中に付きっきりでなんもしてねぇんだ」
「だからあんなに荒れてたのね。おかげですぐに口を割ってくれたから助かったわよ」
「ほっほっほ、そうじゃぞ。お主の功績もちゃんとわかっとるから安心せい――さて、もう一人の英雄がきたかの?」
扉がノックされリリアが入ってくる。若干気まずそうにしているがここにいるのは大人たちだ、茶化す奴などいない。
「あっ……皆さん来てたんですね。遅れてすいません」
「いや、俺たちもきたところだったから気にするな」
「さて全員揃ったかの」
リリアが座ると王様は俺たちに頭を下げた。
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