191~200
テーマ「謎料理」
幽霊の悪口漬け
風が強い日は幽霊もひらひらと舞いやすい。その場に執着を伴わない、ほとんど消えかけの幽霊をトリモチで引っ掛け集める。消えかけの幽霊たちは薄味なので教室の隅に残っていた誰かの悪口と一緒に瓶に漬け込む。幽霊で薄まった悪口はピリリとしていて刺激的だ。幽霊もつるんと喉に入るのがたまらない。
流れ星ミックスジュース
夜、山の奥の静かな湖にボートを滑らせる。そのうち星が空からたくさん落ちてくるが、見るのは頭上ではなく水面である。ちらりちらりと湖に輝く星の写しをポイを使って必死に掬い取る。夜が明ける前に家に持ち帰り、砂時計の砂と一緒に雪解け水に溶けきるまでかき混ぜる。シャーベットにするのもいい。
オーロラパスタ
北極でとったオーロラを色ごとに仕分けする。ここでしっかり色分けしておくことで仕上がりが綺麗になるので気を使う所だ。こねて寝かし、パスタマシンに入れる。茹でるときは沸騰したお湯に星の欠片をさらに砕いたものを混ぜること。グラデーションに気をつけて盛る。仕上げに雪だるまを乗せれば完璧。
蝉のプチシュー
蝉の抜け殻がたくさんあったので集める。アブラゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ。きちんと分けて天日干し。蝉の声を録音機で集めてこれも種類ごとに編集し、冷蔵庫で冷やす。よく冷えたら搾り袋に入れて乾いた抜け殻に絞り込む。種類が違うと雑味になる。外はさっくり中はじゅんわり。蝉の声が鳴り響く。
虹色キャンディー雨味
最近雨続きでどうしようもない。けれど虹が出るから許そう。まずは雨水を集める。大きさの違う瓶をいくつか用意し、それぞれに溜まる音を楽しむ。雨が上がれば虹の根元までせっせと歩き、湧き出す七色の光を瓶に詰める。フライパンで雨水とともに熱し煮詰め、とろみがついたら冷やし固めて出来上がり。
猫の足音パイ
パイ生地を寝かせていたら猫が通ったをの見かけた。かわいらしいから足音を全部練り込んでしまおうか。見えない猫の足跡から音をそっとはぎ取っていく。よく練り込んで、ついでに猫が好んでいる鈴の音も少しだけ鳴らして振りかける。チリチリと金色に光る音が愛らしい。焼き上がりから日の匂いがした。
ミルキ―ウェイエクレア
街明かり遠く、山頂の原っぱで天の川をつかまえる。菜箸を一膳用意して両手に持ち、くるくると川の端から巻き取っていくと綿あめのように柔らかな星のクリームが出来上がる。星の少ない夜の端っこを切り取って、よくこねてから焼き上げる。焼きあがったら星のクリームをはさみ、夜の風をかけたら完成。
綿雪パンケーキ
綿のような雪が木の枝にぽんぽんとついていて、シマエナガがとまっているようである。飛んで逃げないうちによく冷やした手でさっと笊に摘み取っていく。ボールに入れて空気の抜けぬようにさっくり混ぜ、味つけにサンタクロースの置いていったプレゼントのリボンを入れる。両面が青色になるまで焼こう。
オバケマシュマロ
最近オバケに後を付けられている。白い布を被った、中身のない存在だ。というわけでうっとおしいので食べてしまおう。虫取り網でひっとらえて細かく刻み、水、ゼラチンなどを加えて混ぜる。香りと色づけに吸血鬼からもらった乙女の血を一滴。ケサランパサランのおしろいをまぶして固めれば出来上がり。
入道雲パフェ
夏の空、入道雲が湧き起こる。青と白、なかなかにいい組み合わせじゃあないか。まずは青空を少し切り取り、口触りのよい大きさに崩す。容器の底に敷き詰めて、短冊を取った風鈴を砕いて上に行くにつれて多くなるように混ぜ込む。入道雲を引っ張ってきてふんわりと盛り、とっておいた短冊を飾れば完成。
※覚書
次の更新予定
気まぐれシェフの140字パスタ 猫塚 喜弥斗 @kiyato
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