201~210
味 飲 聖
酒蔵の中で、ひときわ輝くボトルを手に取る。状態を確認し一人頷く。店に顔を出すとカウンターに一人、男が座っていた。閉店後の店、ドアベルも鳴らさず来る男。この神聖なまでに美しい酒が、彼を呼ぶのだと思う。事実は不明だ。注がれた酒を目で味わい、飲み込む姿。どこをとっても様になる男だった。
色 神 腹
麗しき晴天の姫君は今日も金糸の髪をひるがえし、空色の瞳を潤ませ世界を巡る。土地を納める神々は手を広げ新緑の枝葉をのばし、姫君の恩恵を一身に浴び活力を得ていた。やがてひび割れ衰え、空腹にあえぐ土地を目にすれば、その柔らかな息は雨雲を作り、大地を潤し蘇らせる。世界は今日も輝いていた。
純 奪 持
彼女は今日も歌うだろうか。ときに深く続く大海原のように、ときに跳ね遊ぶ子供のように、ヴァイオリンの声を持つ乙女。遠い記憶だった。彼女を奪い去ることもできたが、それでもしなかった。虚偽も腐敗もなく、あどけなく笑うその姿。決して触れることのできない、あの少女の純真さが、今でも恋しい。
慰 部 優
校舎の屋上から見おろせば、運動部の走り回る姿が虫のようで滑稽だった。彼女はどんな気持ちでそれを見ていたんだろう。どんな気持ちになって飛び降りたのだろう。何も知らない有象無象の慰めなんかよりも、彼女の優しい声を聞くだけで、それだけでよかったのに。彼女がいなければ僕は生きていけない。
爆 湿 肌
天窓から満月の明かりがさしこむプールサイド。ざぱりと音がして彼女が水から上がったことを示す。水滴に濡れる白い肌、長い黒髪がその上にアラベスクを彩るようにうねる。「おかえり」こちらの言葉に一瞥もせず、ドリンクで喉を湿らせる。一目たりともくれず、彼女はまたプールに飛び込み水を爆ぜた。
荒 腹 子
荒野をひたすら歩く。頭上からは日の光がこの身を砕かんばかりに降り注ぐ。それでも歩き続けるのは、この地の果てに子供達が待っているからだ。私の愛しい子供達がお腹を空かせて待っている。途端、ふと目が覚めた。すべて夢だ。子供なんていない。一人暮らしのがらんとした部屋があの荒野に重なった。
裸 泣 涙
君の柔らかな裸足の指先に、輝く真珠色を塗りこんでいく。「靴を履いたら見えなくなるのに」くすくすと笑う君に泣きそうなのを堪えながら私はぎこちなく笑う。翌日、君を見るための席へ座る。荘厳な音楽を背景に、私から見たバージンロードの君は、涙で滲んですっかり遠くへ行ってしまったようだった。
自 怖 乳
怖れることなど何もない、ここは外の世界とは違う。安全で、柔らかで、温かで。何より守ってくれる人がいる。自分はまだ乳臭い子猫であったときに捨てられて、恐ろしい思いを幾度も繰り返した。窓辺に座ると外の猫がやってくる。外の生き物のくせに、こちらを見下すような視線がなんだか不愉快だった。
乱 触 楽
見た目は真っ赤に咲き乱れる薔薇のようなのに、心は露に震える蕾のような人だった。指先に蝶を遊ばせ、楽しげに笑う彼女はこの世のどんな白よりも純粋で、それを知る者は決して彼女に触れることはなかった。彼女の内面を知らない馬鹿どもを僕らがどう処理しているか、そんなこと彼女は知らなくていい。
中 卵 舌
「さあさあ坊ちゃん寄ってらっしゃい。不思議な卵が1個で10円、10個なら90円だ。買っておいて損はないよ」学校帰りにべらべらと饒舌な男がいた。笊の中に卵が入っている。見た目は鶏の卵だが妙に軽い。中身が入ってないようだった。10円払い割ってみるとそこから色とりどりの光が吹き出した。
次の漢字を全部使って文章作れったー
https://shindanmaker.com/128889
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます