191~200
断 乱 娘
乱れている。この世は腐っている。誰も彼も胡乱な目をして、幼いころ夢見た世界がはりぼてだったことに疲れ果てている。あなたは幸せですかと聞かれて、「幸せです」などと本心から断言できる人間はこの世界でどれほどいるだろう。振り返れば娘時代の私がいる。その目は今の私を責めているようだった。
水 棒 慰
あの人の墓前で、棒立ちする彼女の背中を見守る。まるで呼吸すら忘れた人形のように、彼女は微動だにしなかった。無言で立ちすくむ姿に、慰めの言葉をかけようと思ったが、その一言が喉の奥に詰まって出てこない。彼女から視線を外した途端、ぽつん、と鼻先に水滴が落ちてきた。ああ、雨が降っている。
娘 裏 泣
自分の娘より幼い少女を前に膝をつく。母親を早くに亡くし、父子ふたりで幸せに暮らしていたはずだったのに。彼女は泣きはしなかった。ただ震える声で「しばらく、一人にしてください」そう言って自室に籠った。扉の裏側で、彼女の抑えきれない嗚咽を聞きながら、ただ立っていることしかできなかった。
自 色 笑
美しい色をした花々が、そっと吹き抜ける風にその香りをのせる。常春の妖精たちと戯れる少女は、まさに陽にきらめく宝石のようだった。花色の風の中、少女の黒曜石のような髪が揺らめく。紫水晶の瞳は瞬きすら惜しいようにずっと見開かれている。彼女が笑っている。彼女自身が僕にとっての幸福だった。
決 食 夜
腹が減ったと夜の2時、カップラーメンにお湯を注ぐ。普通なら3分で食べごろになるが、伸びきった麺が好きなので5分ほど待つと決めている。そろそろ食べごろかと蓋を開けようとしたとき「ちょっと待ってくれ」と声を掛けられた。不思議に思いながら開けてみると中で小さなおじさんが麺を茹でていた。
思 娘 暇
結局私たちは暇を持て余した神を名乗る小娘が手慰みに作りあげた玩具にすぎないのだ。ほら、今だって太陽が8個は上がるし、夜は延々と雪が降り積もる。それらに対して右往左往する虫けらをげらげら笑って見ているのだ。だがもしも、神が自ら作った玩具に飽きたりしたら。思惑に耽るだけでおぞましい。
入 頭 感
私の生業は夢狩人と申します。そう数の多い職種とは言い難いため、今はただそう呼んで頂くだけで結構でございます。さて、我々の仕事は貴方のように悪夢を携えた方の頭の中に入り、黒く淀んだ感情を切り払い集めるそれだけのことにございます。おや、目覚めの時が来たようで。それではまた悪夢の時に。
精 欲 病
夢魔というものがあります。欲情と言う病に魘される人間の夢へと入り込み、男には女の形をとり精力を貪り尽くし、女には男の形をとり自身の子を宿らせる悪魔。ですが心配はありません。そのどちらであろうとも人間の夢の中に現れ存在する限り、私たち夢狩人の獲物に過ぎない、というわけでございます。
恥 水 愛
グラスを目の前の女に差し出し、話の続きを促す。「本当に、私には何の取柄もありません」水を一口飲む。「ですが私は」女は瞳を震わせている。私の顔を窺うこともできないようだった。「私は、貴方を愛してしまったのです」ぽっと頬を赤く染め恥じ入るその姿は、まるで朝露に光る薔薇の蕾を思わせた。
奪 滑 水
玄関から足を踏み出した瞬間、いつの間にか穴の中に落ちていた。水の無いウォータースライダーみたいにぐるぐる回って落ちていく途中、なぜこんなとこに穴が?どこまで落ちていくんだ?といった疑問が湧いてきたが、だんだんと思考が奪われていく。終わりない滑走に振り回されることしかできなかった。
次の漢字を全部使って文章作れったー
https://shindanmaker.com/128889
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