131~140
鬱 圧 泣
もう我慢ならない、耐えられない。抑圧に負けて押し潰されそうだった。だがこの地獄が続くなら、いっそ壊れてしまえばいいのだろう。だがこの鬱屈とした精神は押され伸ばされすり減らされても何も変わらずそこにある。私は私の形をしていないのに、それでもまだ生きている。なんだか泣きたくなった。
放 慰 隠
昼の間は隠れていた星たちが、まるで舞台役者のように決まった位置で輝いていた。それぞれの美しい光が互いを引き立てあって、様々な物語を教えてくれて、太陽にささくれた心を慰めてくれた。太陽の熱は夜の間、放射冷却によって宇宙に飛んでいく。凍えた地上から、私も連れて行ってくれないだろうか。
香 感 困
飴細工のように陽を透かすジャングルの中を歩く。甘い香りに誘われて、つい道を逸れてしまってから何年経っただろう。緑に溺れて呼吸が乱れる。それでも歩みは止まらない。自分が自分でないような奇妙な感覚だ。それでもこの誘惑から逃れるのは困難だった。ここまで歩き続けて、罠でないといいと思う。
出 白 裸
遠くの山々から出てきた真っ白な光が徐々に世界を金色に縁取り、街が色づき目を覚ます。カーテンの隙間から差し込む日光から逃げるように、私は布団をかぶった。侵食してくるようで怖かった。隠していたことまでもが赤裸々になりそうで、そんな風に感じてしまう自分があまりにも汚くて、ただ辛かった。
愛 勢 聖
何を愛するにしても、見返りを求めずにはいられない。人間とはそういうものだ。色々な物が手に入る世の中だから、他人の感情すら自分のものにしたいと願ってしまう。そしてその中の大勢は手に入ると思い込んでいる。だが例え聖人でなくとも、愛するものと結ばれるより幸福なことがあると知る者もいる。
襲 穴 犯
息を切らし、路地裏から飛び出す。居合わせた通行人は逃走する犯人でも見るような視線を向けるが、そんなこと気に留める余裕もなかった。逃げなくては、またアレが襲ってくる。ぞろぞろと、ムカデが這いずるような気配を背後に感じる。跳ねるように走り出すと今までいたところに大きな穴が開いた。
掘 帯 水
何もない砂漠の真ん中で、延々と穴を掘り続ける夢をみた。どれだけ掘っても太陽は頭上から動かず私を刺し続け、とうに水分の抜けきった体は、たとえ真っ二つに裂けたとしても血の一滴も出ないだろう。熱を帯びた体はやがて溶けだし、周りの砂が崩れて私に降り積もる。私は私の墓穴を掘り続けている。
腹 怖 持
街灯の点々とした灯りの間を心持ち早足で歩く。ひとつふたつと角を曲がるとき、突然、腕を掴まれた。あっという間に暗がりへ引きずられる。遠くの明かりに光るナイフが目を引いた。数分後、暗がりから出る影は一つ。膨れた腹をさすってそそくさと家に向かう。夜が怖い吸血鬼は獲物を狩るのも一苦労だ。
襲 奪 娘
雪崩のごとく襲い掛かる瓦礫に巻き込まれて僕は死んだ。生娘のように瑞々しい桃の肌、二次性徴前の少年のような伸びやかな手足、神が微細にまでこだわった完全なまでに愛らしい顔、この世の天使であるこの僕があっけなく命を奪われ、しかもこの上なく醜い姿を世に晒すことになる。何たる悲劇だろうか。
隠 傷 怖
いままで本物だと信じてきた宝石が、もしも偽物だったらどうだろう。価値のある美術品が、ほんの小さな傷をきっかけに見向きもされなくなったら?メッキに隠された中身を、誰かが暴いてしまったら?そんなことを私は怖れない、傷つかない。私は美しいから、私は本物だから。他のだれかと違うから。
次の漢字を全部使って文章作れったー
https://shindanmaker.com/128889
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます