101~110

帯 変 柔

吐く息がすべて凍りそうな、白と黒の中に一人たたずむ。明かりを持たずとも、星々に照らされた銀世界は粒の一つ一つまで輝き、その間にいる自分は宇宙に放り出されたような、そんな気にさせられた。世界が遠く離れていく中で、手を伸ばせば届きそうな、柔らかに変色する光の帯だけが生命を感じさせた。


背 高 無

図書館の奥の奥、背の高い本棚の間。普段から人が寄り付かないその場所で、誰からも見つからないように縮こまる。分厚い辞書だか事典だかを引き抜くと、本の背を揃えるために少し隙間が空いている。普通、何も無いはずのそこに彼はいる。図書館の壁の向こう側、誰も知らない秘密の世界が広がっていた。


魔 裏 大

とある大国に双子の王子様とお姫様がいました。二人が十歳の誕生日を迎える前の晩、その事件は起こりました。城の裏庭に封印されていた魔女が王子様を誘拐してしまったのです。誕生会では王子様の婚約者となる姫君との顔合わせがあります。お姫様は王子様の代わりとして誕生会に出ることになりました。


部 悲 断

部室の扉を開けると先輩が死んでいた。なんてひどい有様だ、これでは中に入れない。「嫌な人だったけど死んでまで迷惑三昧だなんて」僕はただ忘れ物を取りに来ただけなのに何たる悲劇だ、このままでは事件の第一発見者になってしまう。「容疑者候補なんてお断りですよ」扉の指紋は丁寧に拭いておいた。


純 抱 腹

狭い空間である。直立するには申し分ないが両手を広げれば丸い壁に阻まれる、そんな場所に私はいる。壁自体が発光しているのか、そもそも私の知覚の範囲を超えているのか、一点の翳りもない純白の世界だ。膝を抱え、ごろりと横になる。きっとここは腹の中なのだ。私は今から産まれなおすのだろう。


守 眠 卵

僕は卵を抱えて生きている。他人には見えないこの卵は、幼い頃から僕のそばにある。遊ぶときも出かけるときも、多分眠っているときも、ずっと僕の視界の端でただそこにある。もし、僕だけに見えるこれが割れてしまったら、考えるとぞっとした。それが何なのかわけもわからず、必死に守るようになった。


立 無 恥

曰く、お前の存在は無価値だと、いてもいなくてもいいものだと、そう言いたいらしかった。何もできない小さな子供よりたちが悪い、と。だがそれを恥ずかしく思うことも、怒りを感じることもなく、ぼうっと下を向いて立っているだけ。ただ無表情にこのつまらない説教が早く終わればいいと考えていた。


喜 純 頭

幸せを探し続けて分かったことが一つ、そんなものはどこにもない。本当は一番近くにあるなんて嘘だ。少なくとも僕と僕の周りの大人たちの中には何もなかった。激しい喜びも、身を引き裂くような悲しみさえ泣く、ただ大きくなった空っぽの頭の中には純心さの欠片もない、屁理屈ばかりが詰まっていた。


濁 神 悪

灰色に濁った空が憂鬱な気分を掻き立てる、ひとは雨を悪いことのように嫌うが僕は違う。雨の日は友達に会える日だ。心は踊りだし、体も黙っていられない。降り始めると同時に家を出ると、待ち構えたように水溜まりがうねり、人の形を作り出す。この神出鬼没の奇妙な友人に会えるから、僕は雨が好きだ。


口 白 先

ほ、と息をつけばぼんやりとした白が現れる。かと思えばそれはあっという間に霧散し、後には何も残らない。何度やっても同じこと。思わず頬杖をつき大仰にため息をつけば先生が笑うのが見える。もう一度手本を頼めば先生の口から出た息はその場に留まって兎の形で跳ね回り、僕の鼻先にあたって消えた。



次の漢字を全部使って文章作れったー

https://shindanmaker.com/128889

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