51~60

難 部 肉

体を伸ばせば縮まった筋肉が悲鳴を上げる。凝り固まった部位をもみあげれば痛みに思わず眉根がよった。困った、こんなにも自分は弱っていたのか。仕事は昔から変わらない、何ら難しい事ではないのだからこれもやはり歳か。死神は一人、公園のベンチで空を仰ぐ。やめよう、昔を思い出してもキリはない。


慰 魔 熱

「熱はひいたか」病院のベットの脇に、黒い男が立っている。「こんなことで死んではいけない、君のお父さんと約束だからね」一見優しげな、慰めにも聞こえる男の声。「せっかくの魂だ、良い状態で持ち帰りたい」甘言に惑わされるな、悪魔に気を許すな。私は泣きたいのを堪え、布団の中にもぐりこんだ。


力 赤 持

先日の狐から手紙が届いた。よほど力を込めて書いたのだろう、宛名に触れると炭の黒い跡が指に残る。どこから手に入れたのか、白い封筒はくしゃくしゃによれていた。米粒で封をされたそれを開けてみると何か小さく平たい物が入っている。逆さに持ち直しふってみると、真っ赤な紅葉が数枚落ちてきた。


腹 慰 聖

配給された保存血糧を飲んでも腹ばかりが膨れ上がり、決して慰めとならず心は満たされない。生きた魂の溶け込んだものでなければ、朽ちたこの身は癒されないのか。しかしただの魂では存在を維持できない、聖賢なる人物の魂を残らず啜ればよいのだが、組織にいる今、それを行うのは不可能に等しかった。


汗 態 起

嫌な夢を見た。気がついた時にはもう体を起こし、喉に詰まる息を短く吐き出していた。時計の針は午前2時を回っており、冷えた空気の中で寝衣に染みた汗が生々しく不快だ。空は重く雲が張り、月も星も無く気は晴れない。態々着替えるのも億劫だったが、気分を変えるためと割り切り布団から這い出た。


暗 美 絶

草木の呼吸すら聞こえそうな暗く静かな夜、僕は一人、湖の傍に立っていた。世界から拒絶されたように冷たく凝る空気の中、鏡のように白い月が影を生む。じっと俯いて待っていると、静かな湖面にひとつ波紋が浮かぶ。波が収まり目をあげれば、湖面には美しい銀色の柔らかな毛を生やした兎が佇んでいた。


反 想 帯

ふと己の行為に疑問を感じるときがある、こんな事に意味はあるのかと。暗く静まりかえる町一帯を見渡す。街灯はチカチカ頼りない点滅を見せ、月明かりは雲がかかり定かではない。まるで化生の分際で人間を守ろうとする自分の様に不確かだ。しかしそれに反して人間を襲う自分など想像すらつかなかった。


頭 帯 酒

目が覚めた時、まるで頭が破鐘にでもなったような衝撃に思わず呻き声を上げた。絶え間ない痛みにまた意識が途絶えそうになる。ぐるぐると独楽のように回る視界に、もう二度と酒なぞ飲むかと幾度目かも分からぬ誓いをたて、己の腸を締め続ける帯を緩めると腑の並びすらぐるぐる捩れる感覚に膝を着いた。


純 襲 傷

狂ったように心身を襲う罪悪感の中、いくら悔いても決して時は戻らない。それを行った結果、一番傷つくのは誰か考えれば分かるはずなのに、考える事すら私は放棄したのだ。純粋な好奇心がもたらした結果などと言い訳するつもりはない。私はただ弟の渾身のブロック工作の前で立ち尽くすしかなかった。


話 陰 荒

最近、誰が言い始めたか分からない噂が広まっていた。なんでも地下の国から『悪鬼懲獄会』が町にくるというのだ。しかし奇妙な話だ。ここには彼らに連れて行かれるようなものは入ってこない筈だ。確かに、陰に潜む大小様々な輩や、荒々しく喧嘩っ早いような奴らもいるが…。町中皆が首をかしげていた。



次の漢字を全部使って文章作れったー

https://shindanmaker.com/128889

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る