41~50

腹 泣 立

腹立たしいという感情はだいぶ前から薄れていた。怒っても彼らは石を投げ続けるし、泣けばそれだけ酷い目に合った。だから私は空家へ向かう。私だけの友人のもとへ。給食の残りを与えている友人は犬猫の類ではないらしい。指を甘噛みする友人を見ながらふと肉を食べさせたことがないのに気がついた。


暇 心 男

休暇を機にタイムカプセルを掘り返したら中に小さな私が入っていた。小さな私は随分と喧しい。好きな男の人いる?お仕事は何?ピーマン食べれるようになった?静かにしてください。ラップの芯でこっちを覗きこむ、そこから何が見えるのだろう。寝相が激しくて何度も蹴られる、安心なんて出来やしない。


脱 肉 反

柔らかな肌、暖かな吐息、濡れた瞳、どれも私には必要なかった。水っぽく醜怪な肉袋が目に映る事が苦痛で、自らに触れることすら嫌悪の対象だった。それに相反するような、硬く、冷たい、神々しいまでの白い骨が私は昔から大好きだった。いつかこの穢れの象徴である肉を脱ぎ棄てる。私は白い骨になる。


高 犯 冷

どれだけ高く遠い宙を望んでも、あの碧い星へは帰れない。冷たい甘菓子、刺すような日の光、笑顔の家族、優しい世界。全て焼かれ、犯され、失われた。いま友と宇宙を渡れるのは奇跡だったが、新たな土地を見つけるのはそれ以上の奇跡らしい。「次はどんな星だっけ?」「地球、僕らの星と似てるみたい」


暇 奪 飲

魔法少女になった日から私の平和な人生は奪われ、非日常と手を繋ぐことになった。魔法少女の人材は稀で、私の後には2人しか見つかっていない。今でも後輩の指導に追われる毎日だ。退屈する暇なんてありゃしない。出涸らしを飲み干し、杖を手にとる。そこ退けそこ退け悪魔共、魔法ババアのお出ましだ。


脱 欲 鬱

鬱蒼とした森の奥、朽ち果てた切り株に湧く黄金色の蜜酒から立ち昇る芳香に思わず目眩がした。それを口にする者の全ての欲望を叶える魔術の溶け込んだ奇跡の聖水。この瞬間をどれほど望んだだろう、どれほどの犠牲を払っただろう。この一口で私は神である私を脱ぎ捨てる。私は限りある命を手に入れる。


持 聖 肉

肉とは人間を創造した神により与えられた食糧である。我々はこれによりいずれ朽ちる生命を持ち、死に翻弄されることになった。しかしそれがなんだ。今日は偉大なるプロメテウスに感謝し、喜びを歌う聖なる夜。憂いも悲しみも全て忘れろ。これより第一回食ったら吐くな吐くなら帰れ焼肉会を開催する。


神 純 起

「もっと神っぽい事がしたいな、洪水とか嵐とか起こしたい」新緑に輝く天蓋の中、体を起こした主は両足の義肢をガツリと叩いた。普段は子供のような彼をなだめるのが私の役目。神という存在は純粋ではあるが善良である訳ではない、これだって契約と封印に飼い慣らされた化け物と何ら変わりないのだ。


温 欲 飲

温かなココアを一口ふくむ。とたんに広がるのは柔らかな風味と牛乳のまろやかな舌触り。幸福の表現に“天にも昇るような”というものがあるが、この、世界の奥深くにゆっくりと飲み込まれていくような、そんな心地よさが堪らない。自分が無欲であるとは思わないが、この瞬間は何よりも満たされている。


赤 黒 濁

先生の口に流れ込む赤色の液体。貴重な日々の糧であるそれを、先生は一口ずつゆっくりと飲み込んでいく。ごとり、ごとり、ごとり。白い喉が動くのを見ていると、黒く濁る僕の食欲が大きく口を開ける。耐えきれず、思わず舌舐めずり。吸血鬼以外の血を飲めない僕は、先生が食事を終えるまで待ち続ける。



次の漢字を全部使って文章作れったー

https://shindanmaker.com/128889

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