31~40

小 立 穴

空にぽかんと空いた穴はどんどん小さくなっていった。小さな星達は幽かに煌めきながら駆けていく。後は妹だ、声も立てずに涙をこぼす少女を、眠るまでずっと抱えていた。翌朝、目を覚ますと彼女は先に起きているようだった。今日はいい天気だ、青い空を窓からひょいと見上げると太陽がなくなっていた。


眠 想 聖

想造式星精生成炉の完成後真っ先に起きた事件と言えば、生成炉作業員一斉昏睡事件である。生成炉製星精第一号「ヘるめす」より放たれた2匹の聖蛇が、現場にいた作業員17名に咬み付いて眠らせたのである。幸い工場を訪れていた精霊術師によって蛇は2匹とも捕らえられ、作業員も命に別状はなかった。


愛 奪 獣

今まで奪うことしか知らなかった。知ろうとしなかった、目を背けていた。追われ、刻まれ、引き裂かれた獣の目には、与え、慈しみ、尊ぶその姿があまりにも美しく、光り輝いて見えた。今まで受けたどんな苦しみよりもこの身を焼いた。醜悪で呪われた自分を愛するというこの少女が何よりも恐ろしかった。


態 罪 濡

彼女を突き飛ばした時、あまりに軟らかく脆い感触と血に濡れた爪に怯えたのは私の方だった。だがいくら傷つけても彼女の態度は変わらなかった。彼女の傷が増えるたび、自分の罪も刻まれるようで恐ろしかった。誰も傷つけたくないのに、いつかあの手も私を引き裂くと思う私には拒絶しか残されないのだ。


態 悪 根

血と共に潜む軟らかな魂を飲み込み、相手と一体になる。我々はそれを罪悪とは思わない。その人間の感じた喜びも悲しみも快感も苦痛も、消えることなく永遠に私の中で反芻され続ける。命を摘み取るのではなく、根から掘り起こし私の魂に植えるのだ。人間は我々の態様を鬼と称する。闇の住人、吸血鬼と。


慰 抜 湿

彼は深い渦の中にいる、どろりと濁る悲しみと耐えがたい苦痛の渦に。泣き崩れる彼に触れることはできなかった、かける言葉すら浮かばない。私のどのような慰めも、彼の心を癒すことはないだろう。痛みを癒せるのは同じ痛みを受けた者だけだ。彼の涙がどれだけ頬を湿らせても、抜けおちた髪は戻らない。


香 好 難

甘く鼻腔をくすぐる香になんだか落ち着かない。「いい匂いだろ」店の常連さんがね、旅行土産にくれたんだ。みやげもの。延々と香りを燻らせるそれの箱に目をやる。これは気軽に買ってやれるようなものだったろうか。彼は人からの好意に鈍感だから難しいだろう。見も知らぬ常連とやらが気の毒になった。


心 怖 液

若木のような柔らかな心に刻まれた、苦痛、憎悪、殺意、悪意、害意、狂気――恐怖。七不思議の追体験、都市伝説の顕現、脳裏に浮かぶ幻燈が眼前に映し出す現実を誰も理解してくれない。浸食する毒液のような怪談に立ち向かうすべはない。十年の時を経たかつての少年少女のもとで、百物語がまた始まる。


罪 荒 晩

罪人達は滅んだ、数少ない善人を道連れに。荒れた大地を一人歩く。友人には悪いが、この乾いた土の感触も間もなく失われると思うと心が痛む。満月と氷河の主、私の友人、最期の同胞。季節も太陽も殺され、この世界はただ凍りつくのみだ。私は凪と夜を統べる者。毎夜満月の晩餐会。私と貴方の二人きり。


背 小 暗

縁の下を覗きこむと、金色の瞳と目が合う。1年程前、石を投げ追いかけてくる彼らから逃げた私は、空家の暗がりに潜む友達と出会ったのだ。「また大きくなったね」柵の間から指を差し込むと鋭い牙に甘噛みされる。初めは小さな背中を撫でていたのに。変わらぬ金色を見つめながらふと笑みがこぼれた。



次の漢字を全部使って文章作れったー

https://shindanmaker.com/128889

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る