21~30

娘 病 抱

そっと娘を覗き見る。細い、今にも折れてしまいそうな白い腕。私とはまるで違う生き物。私は獣、死の主にして病の王。爪は千の命に毒を刻み、牙は万の命を噛み砕く。私はただそうあるだけだった。なのになぜ、私は愛するのだろう、なぜ慈しむのだろう。誰にも触れず抱きしめられることもない、私は獣。


晩 愛 入

長く続いた神殺しの時代は、神々の愛を失った人類の滅亡という形で終わった。残った神は二人だけだった。満月と雪の神、夜と凪の神。二人とも何も生まない、死の神だった。どのような生命もここに立ち入ることはなかった。日は昇らず、花も開かず、永遠の氷河と夜の中、今日も二人きりの晩餐が始まる。


獣 冷 起

冷たく凍るような眼差しだった。目を覚ました娘は、自身に突き刺さる視線から少しでも逃れようとした。か細い身を掻き抱き、壁際まで思い切り後ずさる。頭を強くぶつけたが、そんなものより目の前の恐怖が勝った。身を起こす獣に思わず涙が浮かぶ。しかし獣はそのまま目をそらし、背を向け立ち去った。


決 美 恥

瞼を落とせば、目の前に鮮やかな夢が広がる。蜜色の雲の下、 甘やかな藤色の葉を巡らした木に寄り添う、真っ白な女がいた。「決して来てはいけないと言ったのに」小さな子を叱るような微笑みに、少し気恥ずかしくなる。「ええ、でも貴女がいるから」女はますます困ったようで、美しい睫毛を震わせた。


大 快 精

心地よい眠りの大海原から浮上すれば、世界は現実に包まれる。窓の外、濁る空を睨み付ける。同じ灰色でも、こうも不快になるものか。灰色とは、あの女の白い肌に差すような、柔らかく透き通る色でなくてはならない。溜め息を一つつく。まずは肉体的に充実していなければ、あの精神世界には旅立てない。


小 怖 男

恐怖だ、人類の進化は恐怖を克服することから始まる。己の中の矮小な自尊心を取り払い、 人類として、男としての覚悟を決め、目の前の大きな壁を見据えなければならない。今この瞬間の勇気は、天の国に向かう第一歩となる。恐れはない。呼吸を整え、いざヴァルハラ(女子風呂)へと、足を踏み出した。


欲 病 湿

湿った土の嫌な感触が足から浸食してくる。早くこの森から抜けなければならないのに、空気すら重く纏わりついて邪魔をする。もっと速く、もっと遠くに、ここから離れないと。「なぜでしょう、欲しいものは何でもあるのに」目の前に白衣の男が立っていた。「ここは静池病院です」誰もお家に帰れません。


暇 味 顔

滑る銀色、白い指先に柔らかく伝う紅珊瑚の、息が詰まるような芳香に思わず喉を鳴らすと彼は顔を歪ませた。久方ぶりの御馳走だ、仕方がないだろう。ゆっくりと味わいながら飲みたいが、奴らに見つかる前に血を素早く舐めとる。次は彼の食料を探さないと。長らく食事をとる暇もなかったのは彼も同じだ。


下 大 神

眼下の町は祭りの準備で大騒ぎだった。昼夜を問わず星達が走り回り、鬼と河童が甘味屋の暖簾をくぐるこの国でも、神様の存在は特別なものだ。けれど知らなかった。明日は神様の誕生日、それを聞くまで神様にも生まれた日があるなんて考えもしなかった。今までの分まで盛大に祝おうと皆で決めたのだ。


穴 決 愛

夜空に穴が開いていた。妹が水に映った星に蓋を被せて捕まえたらしい。「せっかくつかまえたのよ」目を潤ませる妹に決然として声をかける。「お星さま息できないだろ、空の仲間も呼んでるぞ」とうとう泣き始めた少女は、それでもそっと蓋を開けた。小さな星明かりは愛しい友のもとへ駆け昇って行った。



次の漢字を全部使って文章作れったー

https://shindanmaker.com/128889

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る