11~20

先 心 部

「先生!先生!私考えたんです!先生の為に私に何ができるか!だって先生!先生は私の愛を捧げてもまったく意に介してくださらない!愛だけではだめなのですね!全部を先生に捧げます!血も骨も脳も心臓も!魂だって先生の為なら惜しくない!先生!どうか受け取ってください!」「いらない」「はい!」


圧 獣 勢

何もかもがうんざりだ。母による過度の庇護も、父の権力への渇望も、教師の思惑も、すべてが煩わしかった。自身にのしかかる期待と重圧に押し潰されそうだった。雑踏の中、大勢の無関心にもまれると小さな一個の自分に戻れる気がして落ち着いた。帰ろう。振り返ると一匹の獣がこっちを見つめていた。


温 起 立

体温計を見ても彼女の熱は下がらない。薬に手を伸ばしてふと気付く。「何か食ってからな」確か桃缶があったはず。すぐに用意しようと立つと、何かが引っかかる感触があった。起きた彼女が服の端を弱弱しくつかんでいる。「もうちょっとそばにいて」早く良くなってほしいのに、動くことができなかった。


楽 舌 感

「あるかな」客が言うと店主は三日月形の目をいっそう細めて返す。「あるとも」店主はカウンターの下から片手に収まるほどの群青に光る瓶を取りだす。「こればっかりは何にも変えがたい楽しみだ」氷を浮かべただけの水に、ほんの少し混ぜ合わせる。それは舌ではなく、感情に訴える喜びの味をしている。


晩 心 声

ビロードのような手触りの、深紫の紙に黄色く光るインクで書かれた月面舞踊会の招待状に思わず声をあげた。最後に舞踊会に出たのはいつだろう。仲間たちと手を取り合い、月の上で地球を仰ぎ見ながら踊るあの光景は、今でも心に深く刻まれる。早く満月になればいい。晩景を眺め、来たる月を待ち続けた。


荒 飲 子

忌々しい魔女め、よくも私をこんな目に。「せんせ」振り返ればミルクを手に“私”がやってくる。置かれた受け皿を見下ろせば嫌でも現実が目に入る。柔らかな毛、か細い爪、桃色の肉球、あの魔女は私と私の子猫を入れ替えたのだ。苛立ちに任せ、ミルクを荒々しく飲みほす。実にうまいのが尚腹立たしい。


顔 変 恋

最近先生の様子が変だ。いつもしかめっ面して本ばかり読んで、たまに外に出たと思ったら花に紫の液体をかけている。そんなおかしい先生がもっと変になったのだ。いつも不機嫌な顔はなんだかしまりがなくぼんやりとして、この前飼い始めた子猫を連れ歩く。失恋しておかしくなった説が一番有力なのだが。


棒 射 入

こんな寂れた神社に足を運んだのも、賽銭箱に五百円を投げ入れたのも全部気まぐれだ。たまたま朝の占いが1位で、たまたま棒付きアイスのあたりを連続で当てたから。今日の私はどうかしてた。「どーか私に友達をください」寂しい訳じゃない、日射病で倒れた時くらい介抱してくれる人が欲しかったのだ。


好 色 射

賽銭箱の五百円を悔やみながら、私は家までの道をのろのろ歩いていた。「スミませン」後ろから声をかけられる。振り返った先にはおかしな格好のやつがいた。恰好というか、それはどうでもいい。目の前のそれは薄紫色の肌に赤い目をしていた。ぐらりと視界が揺れる。どうやらまた日射病になったらしい。


好 魔 変

宇宙人、地球じゃない星の奇妙な生き物。そんな訳も分からない全身紫の、悪魔のような見た目の生物に、思わず口をついて出た言葉。「私と友達になってください」変人と思われてもいい。ただこいつが倒れた私を介抱した事が、凄く、非常に、とても、嬉しく思えたのだ。誰かに抱いた初めての好意だった。



次の漢字を全部使って文章作れったー

https://shindanmaker.com/128889

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