気まぐれシェフの140字パスタ
猫塚 喜弥斗
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1~10
気 棒 息
要するに気力の問題なのだ。ふっと息を吐く。前を見据え、肩の力を抜いて立つ。目の前の冷たく硬い、丈夫な鉄で出来た棒。しかし、これから行うことを考えればまるで糸のように頼りない。自分は目の前のそれに、己のすべてを預けなくてはならない。まったく、逆上がりも出来ないなんて情けない限りだ。
話 心 無
惨劇を目にしても、彼の心情は穏やかであったように見えた。「怒ってる訳ではないんだ」言葉を無くす自分に対し、彼は滑らかな口調で話を進める「ただ、悲しいだけだ」雰囲気に反し、ただ恐怖に震えることしかできない。そっと目を伏せる彼と自分の間で、本日のおやつは静かに床と抱擁を交わしていた。
話 変 恥
「これは健全な欲求なんだよ。年齢の近い女子の下着を手にするのは恥に思うことじゃない。確かに妹の下着を狙ったことに関しては変態と言えなくもないが、この場合他の誰かから入手することが困難であったからで妹に対し性的な欲求を持っているわけでは」「話はいいから私のパンツ返してよお姉ちゃん」
荒 心 欲
辺り一面血の海だった。説得は失敗したのだ。「私は悪くない!なにも、何も悪くない!」荒れ果てた部屋の中央で、髪を振り乱し叫ぶ彼女に言葉を無くす。我欲と妄執に振り回され、愛する夫すらも手にかけた、哀れな女。床に伏す男の表情は、ただ幼い頃の心寂しい面立ちが幽かに浮かんでいるようだった。
話 破 赤
雑誌の端にシワが寄るのを見て、ようやく指先の力に気づく。「赤、似合わないんじゃない?」話しかけてもその瞳は私を見ない。「んー、そうかなあ」ひらひらと宙を舞う指先の赤。「でも赤が好きって言ってたし」とうとう破けてしまった雑誌をさりげなく閉じる。あいつの好きな色なんか似合わない。
愛 液 水
ふと頬に触れるものがあった。目を開くと覗きこむ瞳に合う。「嫌な夢見た?」冷たく湿る感触で自分が泣いていたのだと悟る。「さあ、忘れた」視線を下げると彼の指先に光る水滴に気付く。震える液体をぼうっと見ていると、顔にタオルを押しつけられた。頬を強引に拭い去る、その痛みすらも愛おしい。
微 変 断
「わかってる、おいしくないんでしょう」表情の変化を悟られたとは考えにくい、そういったことには自信がある。「私はおいしいと思ってたんだけど……親とか微妙な顔するの」彼女はこの味に自信がないらしい。「いや」最後の一口を飲み込む。「拷問だと思えばいける」断言すれば掌底打ちをかまされた。
震 冷 性
震える体を柔らかな力で締め付けられる。振動に身を委ね、反射的に抵抗しようとする身を抑える。火照る体に冷たい外気が刺さる感覚も、今では快楽を刺激する要素の一つだ。こういうときに声を出すのをためらう性分だが、唐突な圧に思わず悲鳴が上がる。やはりこのマッサージチェアを買って正解だった。
勢 快 汗
全身から嫌な汗がにじみ、背を伝う感触が不快だった。落ち着け、冷静になれ、まずは攻撃をかわすことに専念しろ。奴の弱点であるスタミナ切れをつけば勝つのは自分だ。回避に勢いを付け、同時に距離を取る。過ちは認めるが、こっちだって怒りは収まらない。自分のおやつに名前を書かない方が悪いのだ。
腹 白 液
白く柔らかい肌をなでると不思議と心が安らぐ。くすぐったそうによじれる腹を下り、中心の窪に指を引っ掛けると手をはじかれた。顔を覗き込むとまだ目を閉じてそっと息をしている。瞼に口づける。このまま蕩けて混ざって、一つの液体に溶け込みたい。耳に噛みついたら「調子に乗るな」と叩かれた。
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