第36話 『エンディミオンの館』とは

「『エンディミオンの館』ですか……なかなか珍しい場所に行きますね。目的は……アイリスさんのパワーアップでしょうか?」



 デュナミスさんの課題に従って『エンデュミオンの館』に行く前に冒険者ギルドで情報を聞こうとセイロンさんの元へとやってくると、彼女はアイリスを見てうなづいた。



「そんな感じよ……難易度は高いって聞いているけど、何か情報をもらえないかしら?」



 さすがに父から課題を出されたとは言えないアイリスが適当に誤魔化す。セイロンさんはその様子に何かを気づいたようだが、そのまま説明を続ける。



「もちろん、ありますよ。いろいろな冒険者さんが挑戦してますからね……ただし、エンディミオンの館の難易度はとある条件のため八層レベルだと言われています。まだ、お二人には早いと思いますが……」

「八層クラスだって? そんな強い魔物が現れるんですか?」

「いえ、敵は六層の魔物とああまり変わりません。ただ、エンディミオンの館は状況が特殊なんです。あの中には特殊な魔力がうずまいており、攻撃が魔力でしかカウントされないんです。物理攻撃ではお互いにダメージを与えることができないんですよ。魔導王が作り出した魔法使いを強制的に強化する施設それが『エンデュミオンの館』なんです」

「まじか……」

「噂には聞いていたけど予想以上に厄介ね……」



 セイロンさんの説明を聞いて俺とアイリスは同時にうめき声をあげた。つまり、物理攻撃を得意とする俺やブリュンヒルデはだいぶ弱体化されるわけだ。

 そして、それは俺たちだけでなく、他のパーティーも同様だろう。普通はバランスよく組むからな……



「アレイスター……エンデュミオンの館にいったら、外で待っててくれるかしら。中には私だけで……」

「それはないぜ。アイリス。お前は俺を助けてくれたのに、俺にはお前を助けさせないつもりかよ。それに……俺たちはパーティーだろ? 俺が時間を稼いでお前がとどめを刺す。いつもとあんまり変わらないだろう?」



 ふざけたことをいうアイリスの言葉をさえぎって俺は自分の意見を押し通す。すると彼女は目を見開いて嬉しそうに笑いながらほほを膨らます。



「もう、かっこつけたがりなんだから……ますます、失敗できないじゃない。ショップに行くわよ。少しでも、私が多く魔法を使えるように魔力回復ポーションを買い占めるわよ」

「ああ、そうだな。がんばろうぜ」



 話はまとまったとばかりに冒険者ギルドを後にしようとした時だった。俺は服の裾をセイロンさんに引っ張られる。



「どうしました? まさかデートのお誘いでしょうか?」

「うふふ、未来の英雄であるアレイスターさんのおごりならいつでも付き合いますよ……と冗談はさておいて、何があったかは聞きません。ですが、アレイスターさんもですが、それ以上にアイリスさんが何かを焦っているように見えます。困ったときは私たちを頼ってくださいね。そのために冒険者ギルドの私たちがいるのですから」



 セイロンさんの言葉に俺は目を見開いた。それと同時にこの人は本当に冒険者をよく見てくれているのだなと尊敬の念を抱く。

 ああ、そうだよな……俺もアイリスが冒険者をやめるかもしれないって思って焦っていたのだろう。



「ありがとうございます。セイロンさん、それではさっそくお願いをしてもいいでしょうか?」



 俺は彼女に一つの依頼をする。早く該当の人物が見つかるといいのだが……



「アレイスター、何をしているの? いくわよ」

「ああ、悪い、すぐいくよ」



 そして、最後にセイロンさんに頭を下げて、俺たちは冒険者ギルドを後にした。




-------------------------------------------


誤字は後程まとめて修正致します。 いつもありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る