第31話 六層『魔法使いの里』

 俺とアイリスはパーティーを組んで数日がたった。連携にも慣れてきたので六層の攻略を始めていた。



「アイリス!! 援護を!! ブリュンヒルデ、一回引くぞ!!」

「わかりました。マスター!!」

「任せないさな。火の弾よ、すべてを焼き払いなさい!!」


 

 俺とブリュンヒルデが引いた直後にすさまじい熱量の火の玉がさく裂し、ロブリンウィッチの作った風の結界ごと焼き払う。

 そして、俺たちは煙の中を突撃し、いまだ残っている敵に斬りかかる。ロブリンシャーマンが召喚した魔狼を切り捨てながらなんとか、ロブリンシャーマンに近づいた俺は得意の突きをお見舞いしてやる。



「接近戦ならばお前らには負けねえよ!!」

「ロブブ……」



 杖しかもっていない相手は接近戦となれば思ったよりももろかった。俺が断末魔を上げる敵から剣を引き抜くと、ロブリンウィザードを葬ったブリュンヒルデがこちらにやってきて眉をひそめる。



「偏った編成ですが、ここはなかなか大変ですね……まさか。敵の全員が魔法使いとは……」

「ああ、それがここ……第六層『魔法使いの里』の特徴だからな……」



 俺は倒したばかりのロブリンシャーマン、ロブリンマジシャン、ロブリンウィッチたちのお死体を見つめて勝利したことに安堵の吐息を漏らす。

 噂には聞いていたが中層は一個下るごとに一気に難易度が上がるな。俺は敵たちが身に着けていた杖を見て、初心者冒険者が装備しているような特別なものではないことにちょっとがっかりする。

 これじゃあ、拾っても二束三文だな。



「魔狼を召喚するロブリンシャーマン、攻撃魔法を得意とするロブリンウィザード、補助魔法を使いこなすロブリンウィッチのロブリン魔法部隊に当たるなんてちょっとついてなかったわね……こいつらは六層でも最強クラスよ」



 少し顔色の悪いアイリスが息を切らしながらも解説をしてくれる。今回は敵が出てくる魔物が魔法使い系ということで、遠距離での戦いが主体になっているため彼女の魔法にかなり頼ってしまっているのだ。

 そして、彼女の魔法は燃費が悪い。



「大丈夫か。アイリス? 魔力回復ポーションを飲め。やっぱりお前の負担が大きすぎるか……やっぱり、何か魔力を制御するモノでも召喚するか……」

「ありがとう、アレイスター。でも、気にしないで……そもそも、私が魔力を制御できないからこうなってるだけですもの。接近戦はあなたたちに頼っているのに得意な遠距離攻撃で私だけ甘えてはいられないの」



 心配している俺の言葉に彼女は気丈にほほ笑んで答える。そうだよな……彼女もまた、冒険者なのだ。俺とパーティーを組んでくれた、俺のことを対等に見てくれた冒険者なのだ。だったら、俺もひいきをしたりしてはいけないだろう。

 そして、俺たちはロブリン魔法部隊の拠点を漁る。人には読めない魔導書や、食料、あとはよくわからないものが煮込まれている鍋などを見る。

 何かの儀式だろうか?



「なあ、これってアイリスなら何が書いてあるのか、わかるのか?」

「うーん。人と魔物だと魔法の種類が違うからわからないのよね……ちなみにその鍋はこっちでいうカレーみたいなものよ。ちょうど食事の準備をしていたみたいね」

「これは食べ物なのですか!! そういわれるとよい匂いが……」

「あなた、元は人間なのよね? 食べない方がいいと思うわよ……」

「いや、今のは冗談ですよ。本当ですからね。ねえ、マスター」



 ロブリンたちのよくわからないものまで食べようとしたブリュンヒルデにアイリスがちょっと引いた様子を見せると、彼女が救いをもとめてくる。



「ああ……そうだな。ブリュンヒルデは食い意地のはった戦乙女なんかじゃないもんな。なら、このお弁当もいらないかな?」

「ああ、それはバーバラさんのお弁当!! 意地悪ですよ、マスター!!」


 

 いや、一瞬本気だったよな……とおもいながら彼女をからかいながら、奥においてある革袋を開くといくつもの光り輝く石がはいっているのが見えた。



「なあ、アイリス。魔石ってこれじゃないか?」

「あ、それよ。やるじゃないの。アレイスター」

「流石です。マスター!!」



 魔石とは魔力を秘めた石のことであり杖や魔力を帯びた防具や剣に使用されるのだ。おおかたさっきのロブリン共が儀式に使うために集めていたのだろう。今回はこの魔石の採取のクエストを受けていたのである。



「じゃあ、街に戻る前に……レベルも上がったしせっかくだし、俺の新しい力を試すとするか!!」

「ええ、なんだっけ。『限定召喚』とかいうのを覚えたんだっけ?」

「ああ、ちょうど17レベルだから、試してみようと思ってな」



 というわけで俺たちは広いところへと向かうのだった。



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