第21話 バーバラの涙
フリーレンに看病してもらった俺は、冒険者ギルドを後にした。それにしても……最強格の冒険者とはいえ、俺の必殺のはずの一撃は届かなかったのが悔しい。
『マスターは十分頑張りましたよ。あっちが卑怯な手を使わなければあなたの勝利でした』
『きゅーきゅー♪』
『ほら、マスター。蝙蝠ちゃんもそうだって言ってますよ。それに悔しいって事は相手に勝てるかもって思えたって事です。恥じる事ではありません』
「……ありがとう、二人とも」
ブリュンヒルデと蝙蝠のの慰めの言葉ではっと気づく。ああ、そうか……俺はこのギルド最強の一角であるガウェインに負けて悔しがることができたんだ。
以前だったら戦う前に心が折れていただろう。だけど、俺は確かに多少なりとも強くなっているのだ。
パチィンと自分の頬を叩いて気合をいれる。そうだ……次はちゃんとした戦いをさせて見せる。俺は新しい目標を胸に気合を入れる。
『それで、今はどこに向かっているのですか? マスター』
「ああ、孤児院だよ。サハギンロードの依頼でかなりの報酬が手に入ったからな」
今の俺の財布はかなり豊かだ。ちび達にお土産を買うこともできるからな。
あいつらの笑顔が思い浮かぶと足取りも軽くなる。しばらく進むと薄汚れたステンドガラスが目立つ建物と中心に銅像が庭が見えてきた。
だが、久々にの孤児院に足を踏み入れると違和感を感じる。この時間ではいつも遊んでいるはずの子供たちがいないのだ。嫌な予感がした俺は急いで駆け出して孤児院に入る。
「おい、誰かいないのか!! なにかあったのか?」
孤児院に入ると、バーバラが料理をしているのが目に入った。だけどその目はどこかうつろで……そんな彼女と目があうと一瞬大きく目を見開いた。
「え……アレイスター兄さま!?」
「どうしたんだ、バーバラ。何かあったのか?」
俺が訊ねると同時に彼女抱き着いてきた。その目には大粒の涙がこぼれそうになっている。
「お母さんが病気になっちゃったの。高い薬がないと助からないって!!」
彼女は俺の顔を見るとこらえていたものがあふれ出たかのように泣きながらそう言った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます