第6話 アレイスターの評価
「すごいじゃないですか!! こんなに素材を持って帰るなんて!!」
「あははは、どうやら俺の隠れた才能が目覚めたようです。」
まあ、まだまだ素材はたくさんあるんだけどなと思いつつセイロンさんに答える。流石にこの前までゴブリンを倒すのに苦戦した男が一気に素材を持っていくと疑われるからな。
「それだけじゃないです、アレイスターさんがずっと腐らずに頑張っていたから、芽が出たんですよ」
「ありがとうございます。それでちょっとほしいものがあるのですが……」
「それってこれだったりします?」
ちょっと得意げに笑うセイロンさんが俺の目の前に差し出したのは二層の地図である。しかもパッと見ただけでなにやらいろいろと手書きでかきこまれているのがわかる。
「セイロンさん……これは、まさか……」
「はい、これまでずっと頑張っていたアレイスターさんへのプレゼントです。本当におめでとうございます。いつかアレイスターさんが二層に行くって言ったら渡そうと思って準備をしていた甲斐がありましたね」
「本当にありがとうございます……」
俺は涙ぐみそうになりそうなのをこらえて、彼女に礼を言う。彼女とはクエストを依頼するときに少し雑談するくらいの関係だったが、いつか俺も二層を目指す冒険者になるのだとずっと信じ続けてくれていたのだ。
「うふふ、気にしないでください。その代わり、アレイスターさんが有名な冒険者になったら『俺がここいるのはセイロンという素敵で気が利く受付嬢がいたからだ』って宣伝しておいてくださいね」
「はい、もちろんです。セイロンという素敵で気が利く美しい受付嬢がいたから今の俺があるんだっていいますね」
「もう、言いすぎですよ、アレイスターさん」
冗談交じりに返すと少し照れた様子でセイロンさんが微笑む。そして、彼女に別れを告げて俺は冒険者ギルドを後にしようと思うと、ギルド内がざわりと騒がしくなる。
一体何が……と思っていると、入り口を見ると、サラサラの艶のある長い青髪の鋭い目つきの美少女のが入ってくるところで会った。彼女の名前は『氷姫』フリーレン。この都市最強パーティー『黄昏の行方』に所属する冒険者で、最速で上層まで到達した冒険者である。
彼女は周囲の冒険者たちの騒ぎを興味なさげにしていたが、俺と目が合うと目を見開いて、無表情のまま瞳を輝かしながらこちらへと向かってくる。
「聞いたわ、アレイスター。ゴブリン達をたくさん倒したみたいね」
「ああ、久しぶりだな。フリーレン。ようやく俺も一歩踏み出せたよ。いつか追いついてやるからな」
「ふふ、約束したものね。だけど、残念ね、私の方がもっと強くなるわよ」
俺の言葉に彼女がからかうように返すのを見て、周りがざわつく。まあ、そりゃあ普段は無口で無表情な彼女がこんな風にはなしているのに驚いているだろうし、俺と彼女の関係性を不思議に思っているのだろう。
今でこそ、底辺冒険者と最高峰の冒険者だが、俺と彼女は同期の冒険者なのだ。俺と同じように珍しいスキルをもっていることがきっかけで仲良くなって、お互いをライバルとして、共に英雄になろうと誓い合ったのである。
「それはどうかな? 俺だってもっと強くなるぞ。ぼーっとしたらフリーレンですら勝てないくらいにな」
俺が冗談っぽくいうと彼女は、当たり前だと言うように頷いた。
「だったら、ゴブリンを倒したくらいで調子に乗っちゃだめよ。それに私は待っててなんかあげないわよ。私も英雄になるために冒険者になったんですもの。あなたは……どうなのかしら?」
「心配するなよ。ゴブリンなんかじゃ満足しないぜ。俺だっていつか深層にいってやるよ。なんたって、俺は未来の英雄アレイスターだからな」
「うふふ、久々にそれが聞けたわね……知ってるわよ。だって、私たちは共に英雄を目指すライバルですものね」
昔を思い出したのか俺とフリーレンは顔をあわせて笑い合う。そして、彼女が今だに俺をライバルと認めてくれていたことが嬉しい。
彼女は満足したとばかりに会話を切り上げて、受付の方へとむかった。
『マスターをちゃんと評価してくださった方がいてよかったですね。』
「ああ……本当に嬉しいな……頑張りを認めてもらえるってさ……信じてくれる人がいるってさ……」
そして、俺は早足でギルドから離れる。流石にギルドの連中に泣き顔は見せたくないからな……
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