第5話 いざダンジョンへ!
翌日俺は冒険者ギルドで依頼を受けてダンジョンへと向かっていた。たまたま会ったアイリスがなぜかこちらをじーっと見つめていた。まあ、どうやって中層から戻ってきたのか気になっているのだろうな……
『マスター、私を召喚いたしますか?』
「いや、まずはステータスの上がった俺の状態を見たい。ピンチになったときは手を貸してくれ」
しばらく歩いていると二匹で歩いているゴブリンの群れを見つけた俺はドドスコ達から手に入れた賠償金で購入したブロンズソード略称『ドドスコ賠償剣』を抜いてゴブリンたちに斬りかかる。
『ゴブ!?』
『ゴブ!!」
「見えるぞ!!」
俺が不意打ちで一匹目のゴブリンに斬りかかると驚くほどあっさりと絶命した。攻撃力が上がった影響か。以前はゴブリン一体を倒すのにも何回も斬らなくてはいけないかったのに……
そして、何よりも大きいのが素早さが上がったからか、相手の動きが見えることだ。ゴブリンの棍棒を受け流して返した刃で首を掻っ切ると二体目も絶命する。
『レベルが2上がりました』
脳内でレベルアップの声が響く。レベルを消費したからか、ゴブリン二体を倒しただけでこんなに上がるとはな……俺は内心感動しながらステータスを確認する。
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レベル12
HP 10→11(+30)
魔力 15→16(+35)
攻撃力 12→13(+30)
素早さ 11→12(+15)
スキル
ブリュンヒルデの加護(召喚者の一部ステータスアップ)
ユニークスキル
マイナス召喚 LV2
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本当にステータスの上りは終わっているな……だけどここ最近は一か月に一つレベルが上がればいい方だったのだ。それなのにこのペースで上がるのはありがたい。
「これが『マイナス召喚』の強さか……」
『はい、マスターが私を召喚したことによりレベルが下がったので、次にレベルアップに必要な経験値が少なくなったのでしょうね』
俺の言葉にブリュンヒルデが同意する。つまり、俺にとってのレベルが下がるっていうのはマイナスどころかプラスばかりじゃないか? 元々レベルによるステータスアップなんて大した量ではないのだ。だったら、がんがんレベルを消費して色々なものを召喚した方が強くなれるだろう。
「ふっははははははは、やっとだ……やっと俺は強くなれる」
『どうしました? マスター?」
「ああ、ごめん、ようやく冒険者らしく活躍できるっていうのがうれしくってさ」
心配した様子のブリュンヒルデに俺は笑顔で答える。あとはいろいろとスキルの研究をしないとな。ブリュンヒルデを召喚した状態で戦うと経験値がどうなるかとか、アイテムなどを召喚した場合はどうなるのか、など色々とある。
『よかったです。マスターそれで……私もそろそろマスターにかっこよいところをみせたいのですが、だめでしょうか?』
俺が考え事をしているとブリュンヒルデが少し恥ずかしそうに言うのだった。
「ふー、だいぶきれいになりましたね、マスター」
「ああ、そうだな……」
俺は魔物の死体の山を前に少し引きながら返事をする。よほど戦いたかったのか、せっかくだからと地下一階にあるゴブリンの集落で狩りまくったのである。
まあ、これだけ倒したのだ。あまり一気に素材を持っていくと怪しまれるので金になるものだけを選んで持って帰ればいい金になるだろう。ちょうど孤児院にも行く予定だったし、チビたちにお土産を買ってあげれそうだ。
そして一つきづいたことがある。
「やはり、ブリュンヒルデといるとあんまりレベルが上がらないんだな……」
「そうですね、私とマスターで経験値が分配されてしまっているのかもしれません……」
「召喚した仲間にだけ戦わせて楽をするっていうのはできないってことか……、まあ、最初っからそんなことをするつもりはないけどさ」
俺の言葉にブリュンヒルデが申し訳なさそうに言う。翼もしょんぼりしているかのように垂れ下がっているのがちょっとかわいい。
そう、あれだけゴブリンを倒したというのに俺のレベルは12から15に上がっただけなのである。だけど、俺にとってそれは予想内のことだった。
冒険者になりたての話だ。少しでも強くなりたかった俺は当時のマイナス召喚で何かできないか試すために、犬を召喚してみて、冒険の役に立たないか実験したことがあったからだ。
召喚された犬は普通の犬だったため、魔物を倒すのには役に立たなかったのにに、なぜか貰える経験値が減って首をかしげていたが、あの時も犬と俺で経験値が分配されていたのだろう。
ステータスに関しては……少しだけ力が強くなっていた気もするが、気のせいだと深く考えなかったのだ。今思えば犬を召喚していた分少しだけあがっていたのかもしれない。
そんな犬も今では孤児院で飼われている。
「どうしました、マスター?」
「いや、なんでもないよ。ただ……昔を思い出して、あの時、冒険者をあきらめなくてよかったなって思ってさ」
「……苦労されたのですね。ですが、安心してください。私がいるかぎりマスターの未来は明るくなることを誓います」
「ありがとう、ブリュンヒルデ」
俺に笑顔で語り掛ける彼女に感謝の言葉を返す。あの時は絶望したけれど、諦めなくって本当によかった。
そして、もう一つ気づいたことがる。
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マイナス召喚LV2
召喚枠
仲間 1/2
武具 0/5
アイテム 0/5
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どうやら同時に召喚できるものの数には限界があるようだ。仲間はあと一人か……魔王とかが気になるが流石にLV99は道が遠いし、表層はもちろん、中層だってブリュンヒルデ一人でも十分な気がする。
ならば次に召喚するのも何にするか……やはり武器やアイテムがいいだろうか? そんなことを思いながらも俺は小腹がすいたので食事を取り出す。ジューシーな赤身肉がはさまれたパンのサンドイッチであり、冒険者ギルドの一番人気のお弁当である。
「よかったらブリュンヒルデも食べるか? 一応二人分持ってきたんだ」
「ありがとうございます。ですが、ご安心を!! 私たちは特に食事を必要としないのです。それに私はあなたを守る戦乙女として召喚されたのです。私の分も食べて頑張って……」
俺がおいしそうな匂いをするサンドイッチを掲げてみせると、ブリュンヒルデの言葉を遮って「くぅーー」という可愛らしい音が彼女のお腹の方から響く。彼女の方を見ると、兜で隠れていない口周りが真っ赤に染まっていく。
「これはですね……」
「食事は必要なくてもお腹はすくんだな……」
「ですが、主からご飯を頂くなど……」
「そのさ……俺はずっとソロでやっていたから誰かとダンジョンでごはんってあこがれてたんだよ。だから、だめかな?」
「うう、その言い方はずるいですよ、マスター。ではお言葉に甘えていただきますね」
そうして、彼女と共に食事を始める。流石はギルド一の人気料理だけあって、肉はボリュームもあり、作られて時間がたっているというのにパンももっちりとして美味しく、赤身肉と一緒に口にすると、肉のうまみとパンが相まって相乗効果でうまい。
ブリュンヒルデはというと……
「すごいです、マスター!! 人間の料理のスキルは日々進歩していたのですね!! 昔は携帯食と言えば水でふやかさないと食べれないような硬いパンだったのに!!」
無茶苦茶幸せそうな顔をして、サンドイッチに食らいついていた。そして、気になったことがあるので訊ねてみる。
「気に入ってもらえて、うれしいよ。だけど、食事の時くらいは兜を外さないのか?」
「はい、これは私が戦乙女の誇りですから」
そういうと彼女はどこか誇らしげに兜に触れる。ちょっと素顔も気になっていたが、見れそうにないのが残念だけど、誰かとダンジョンで食べるご飯は無茶苦茶おいしい。
そうして、食事がひと段落したので、これからについて相談してみることにする。
「ブリュンヒルデは戦いの経験が多いんだよな? 次に召喚すべきなのはなんだと思う?」
「うーん、そうですね、ここらへんの相手ならばマスター一人でも大丈夫ですし、いざとなれば私が守れば良いと思いますので、まだ仲間は不要かと。あと、未熟な状態で強力な武器を手にすると、悪い癖がつきます。なので、まずはここで実戦経験を積みつつ素材を集めるのが良いと思います。とりあえずは防具か持ち運び用のアイテムでしょうか。せっかく魔物を倒しても素材を持って帰れなければ意味はないですし、万が一死んでしまては元も子もありませんからね」
「確かに……ありがとう。やっぱり頼りになるな」
「もちろんです。私はマスターの戦乙女ですから」
ニコニコと嬉しそうに言う彼女を見て、最初に召喚した時とイメージが違うなと思うがこっちが彼女の本性なのかもしれない。
とりあえず彼女のアドバイスに従い防具やアイテムなどを調べてみる。
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アイテムボックス(小)LV10
アイテムボックス(中)LV20
アイテムボックス(大)LV50
疾風のローブ消費LV15
ビキニアーマー消費LV25
魔法の鎧 消費LV30
カイニスの靴 消費LV15
???
???
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ビキニアーマーは論外として防具も結構種類があるな。ソロのため持って帰れるアイテム数が限られてしまうから、一回の稼ぎが少なくなる。防具は……とりあえず二層に関して、セイロンさんに聞いてからでもいいな。
「とりあえずアイテムボックスにするよ、明日は二層に行ってみようと思う。その時はまた、力を借りると思う」
「はい、お任せください。マスター!! 私の力をお見せしましょう:
そして、俺はアイテムボックス(小)を召喚する。いつものように世界が真っ暗になると、俺の手元にはぱっとみ何の変哲もない革袋が収まっていた。
ちょっと拍子抜けしつつも、試しにゴブリンを倒した素材をいれるとどんどんすべて収まる。
「うおおおお。すげえ、あんなにあった素材が全部入ったぞ!!」
「うふふ、よかったですね、マスター明日から楽しみですね」
興奮のあまりテンションが上がりすぎてブリュンヒルデに笑われてしまった。だけど彼女の言う通り楽しみである。そう、俺は久々に冒険が楽しみになったのだ。
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