俺の作戦と目標。

「それにしても…モテモテか…俺も青春してえ…」


 そんなありえない事を寮の自室で呟く。


 …青春、つまりラブコメ。


 男女の創作ドラマは、自分とは関係が無さ過ぎて、実感がわかないから苦手だ…なんてそんなの嘘だ! 俺も欲しい! めっちゃ欲しい! ああ青春したい!


 ただなぁ…俺の場合はドロドロ系なんだよな…


 この永瀬学園の寮は、少子化の名残りからか、一人一部屋だ。



「その上…男女混合寮…」



 その昔、男女同権同質を訴えた狂信者がいたそうで、男女混合はその名残でもあるそうだ。


 そもそも俺には、というか男には子宮がない。


 男女で体の役割が違い過ぎるし、同じ扱いなんて考えるとか馬鹿なのか。いや、狂信者か。


 女の子には優しく。それは当たり前のことで、権利云々の話ではないと俺は思う。


 一応、この寮の男女フロアーは別々だが、自由に行き来できてしまう。行き来どころか、もし仮にデキちゃったら探索どころではなくなる。


 おそらくそこも探索者としての試験や試練なのだろうが、この年頃の男子はだいたい馬鹿だ。馬鹿なんだ。


 男女混合の上、一人部屋。


 もう不安しかない。


 俺が最も恐れていた部分だ。


 学園に来たくなかった問題点だ。


 そう強く懸念しているのは、大きなネームプレートとか掛けねばヤリ部屋にされてしまうからだ。


 申請した大きなネームプレートはまだ届いてないからソワソワしてしまう。



「あ、ヤなこと思い出した…」



 昔学校行事であったことだ。


 林間学校や修学旅行などであったことだ。


 二人部屋なのに、何故か女子を連れ込む親友。どうやら俺が見えてない。見えてないなら丁度いいとばかりにおっ始めやがった。


 その女の子は好いていた幼馴染だったんだよ。


 そんなの見たくねーよと、一目散に逃げたら、その後何故か爆発騒ぎが起こり、寝床が無くなり、適当なところで泣きながら寝ていたら寝坊し、置いてけぼりにされ、家に帰れなかった。


 こんなの実質主人公じゃね? とも思ったが、誰にもわからないんじゃあ、そんなのにはなれない。


 家族と神殿警察の人力によって助かったが、軽いトラウマが生まれた。


 これが伝説のBSSというやつだと知ったのは随分後だった。


 それはもういいんだが、自分の部屋を犯されるのは嫌だ。侵されるか。どっちも同じだな。


 じゃなくて、違う違う、作戦だ。


 このモノリスだ。


 大賢者様が生み出したと言われるこのモノリス。役所の手続きから免許や資格の情報、インフラの利用に財布。あらゆる生活基盤がこれ一つで済む。


 動画だって撮れる。


 録音だってOK。


 しかも本人しか使えない。


 いろいろと自力で調べた限り、わかったのは、魔法的な何かで常に自分と同期していて、学園ではこれで出欠をとっていると思われる。


 おそらく迷宮もそうだろう。


 何故先生にちゃんと聞かないかって?


 手を挙げても誰にも気づいてもらえないからだ!


 フッ、キラリと尖ってるぜ。


 そしてこのモノリスを落としたり失くしたりするとこの学園では罰則があると言われているが、これが無いと生活がままならないから誰も基本的には落とさない。

 

 俺は普段から落とし物には気をつけている。外食に行っても、店を出る際にはくまなく座席周辺を調べている。


 何故なら落とし物に気付いてもらっても、俺を見つけれないからだ。


 もっとも、自動扉が反応しにくいから行ける時は稀だが。


 今回はこの落とし物を利用したい。


 つまり迷宮に潜るだろ? モノリスわざと落とすだろ? 迷宮から逃げるだろ? 学園側は把握するだろ? 拾ってくれるだろ? 授業に参加したことにはなるだろ?


 そして後日罰則を受けようとするだろ?


 でも俺を見つけれないだろ?


 それに俺は特殊クラス。


 つまり留年にならない。


 完璧だ。


 むしろ退学でもいいな…どうやったらなれるのか。罰2とか罰3とか取ればいけるのか……離婚みたいだな。してみたいぜ。相手いないから夢のまた夢だぜ。婚約出来たら絶対離さないぜ。


 ま、一応調べてみるか。


 フッ、キラリとした夢が出来ちまったぜ。


 NO留年、YES退学。


 これが俺の当面の目標だな。

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