伝説の勇者の伝説。

 この俺のジョブ、ザ・モブ。


 いやもう俺でいいよな。


 俺しかいないし。


 この俺の特性を今回利用してみようと思う。

 

 俺の特性は誰かとニコイチパーティを組むと薄らとだが認識される。試してないが、三人四人だと認識は難しいと思う。


 そして吹き飛ばされると初めて気づかれる。


 そして嫌な顔をされる。


 これは、地面に転がってやっと見つかるからだ。実は見つかりたい時は寝転ぶしかないのだ。


 犬の服従ポーズなら完璧に見つかる。


 それが俺だ。


 ただそんな事をすれば当然おパンツが見えてしまう。邪な気持ちを抱いてしまう。吹き飛ばされてしまう。


 男子ならてめぇ逆にバカにしてんのかと伝統の893キックを喰らってしまう。この数字はよくわからないが、おそらくダメージ量だろう。


 そんな膨大なダメージなど受けたら死んでしまう。


 だからこれはノーだ。


 それにニコイチになっても下手をすればパッシブで吹き飛ばされるからこれもノーだ。


 パッシブからの転がってからの冤罪からの再びパッシブとか絶対嫌だ。


 今度は床のシミになってしまう。


 ニコイチにならず、屈辱も受けず、吹き飛ばされないためには迷宮に潜らないのが一番だ。


 これを叶えてみせるのだ。





 一応仮病とかも考えたが、専門のスタッフが常時回復魔法を掛けているから無理だ。 


 寮の管理人が回復系のジョブなのだ。


 ちなみにこの学園は男女混合の全寮制だ。


 探索系学園に来たくなかった理由はこれもある。迷宮以外で、俺の最も恐れていた部分だ。


 それは今はいい。


 男女混合、これは、パーティ訓練でもあると同時に、昔々の少子化時代の名残りでもあるそうだ。


 この世界に迷宮ができてからは、種の防衛本能か、劇的に出生率は上がったそうだ。


 一説によると伝説の勇者様のせいらしいが、何をしたんだろうか。


 伝え聞く話は全て荒唐無稽過ぎて、いまいち信憑性がない。


 何せ1000人斬りだ。しかも混濁色持ちがその中に100人以上もいたという。


 混濁色とは勇者様にしかわからない瞳の色で、愛の証だと言われている。


 だが、伝承を紐解けば解くほど、混濁色が愛の証には思えない。凶悪なバフが乗ってるのか、バーサーカとしか思えない。


 それがハーレムなのよ、と記載されていたが、恐ろしすぎる。


 まあ、誇張だと思うが、英雄色を好む、ということは今も昔も変わらないのかも知れない。


 だが、決して羨ましいとは思えない。なぜなら絶対戦争が起こるからだ。


 ジョブ持ちをそんな人数斬るなんて狂ってる。もしくは勇者様特有の何かしらのスキルがあるのかもしれないが…1000人のジョブ持ち女子を調伏する方法か…


 いや、無理ゲーだろ。


 絶対眉唾だ。


 いや、伝説の勇者様だしな…


 はぁ…まあ、でも俺もそこまでとは言わずとも少しはキラリと尖りたいものだ。


 いや、ある意味尖っているとは思ってるんだ。


 でもそれはちゃんと人として生活出来ていればこそだ。


 もし仮に意中の女の子と仲良くなれても、犬の服従ポーズでしかコミュニケーションとれないとか…そしてそれを良しとする女の子とか…


 ご主人様と飼い犬か…


 オラ、そんな人生嫌だ。


 死ぬのも嫌だ。


 そんな未来、絶対に避けなければならない。


 その為には迷宮…ダンジョンには絶対に潜ってはいけない。


 何故なら俺はモンスターにはモテモテだからだ。


 第一犠牲者になるからだ。


 それがモブだからな。


 だから、このジョブの力。


 それを使って、逃げるのだ。

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