第5話
次の日、昨日の雨がまだ少しだけ存在の色を残すように曇り空が広がっていた。こんな天気の日はやたら授業が長く感じる。国語に歴史、政治経済。内容もあまり入ってこない上に一定のテンポ間で話されると余計に眠たさが助長される。ほとんどの生徒が話を聞いていない。寝ているもの、内職をしているもの、何もしていないが上の空のもの。高校2年になると、まだ夏休みにも入っていないこの時期でも進学を真剣に考え始め勉強に励み始めるものも増えてくる。だが、そんなものでさえも授業は聞いていない。ほとんどが塾で受験に必要なものを賄う。いつの間にか学校は友人を作り、行事をこなして思い出を作るためだけの施設になっているようだった。管理と時間制約のためだけに授業というシステムがそこに存在している。私のような人間にとってはその本来のシステムだけが学校に来る理由である。塾にも入っていないし進学先のことは考えてはいないが、将来のことを考えると大学へはいきたいとは思っている。このままの成績を続けられればきっとそれなりの大学へ奨学金付きで入ることは出来るだろう。そんな上の空で授業を聞いていると、いつのまにか終わりのチャイムがなり、昼休みに入った。
今日はなんとなくすぐにイヤホンを耳にし、外界から一度外れることにした。なんとなく押したプレイリストからはアップテンポなボカロに似た曲が流れる。最近天才と言われる歌手の曲らしい。たまたまつけたテレビでそんな話をしていたような気がする。テレビは普段BGMがわりにかけることはあるが、最近はもうそんなことはしていない。なんとなく左後ろを見る。いつも通りアリサを中心に何かで嘲笑を浮かべている。私はすぐに窓に目線を戻し、目を閉じる。イヤホンは3曲目をの曲を奏で始める。どうやら今はボカロのような曲も流行っているらしい。まぁ、ボカロに別に詳しいわけではないけれど。
あっという間にプレイリストは一周し、昼休みも終わりに近づき、イヤホンを外し片付けようとした。
「へぇーお前ってこんな音楽聞いてるんだ?」
また何故か思い出してしまった。1日たって今は私の世界に踏み込まれた気がしてなんとなく、嫌な気持ちが残った。クラスメイトじゃなかったから顔しか知らないけれど、もう関わり合いたくはない。
そんな気持ちを察してか、授業開始のチャイムが鳴り響いた。
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