第7話 紗友花  天涯孤独

 私は、10歳の時に両親を亡くした。

まだ、祖父母が健在だったから、はたちまで祖父母に育ててもらった。

短大に行かせてもらって、地元の企業に就職し、これから、多少なりとも祖父母に恩返しをしていこうと思っていた。

その年の秋、以前から患っていた病気が悪化して、祖父が亡くなった。

年を越して、やっと春めいてきたころ、祖母が呆気なく亡くなった。

祖母は、持病もなく歳の割には比較的元気だったのに、こんな風に突然別れがくるとは思わなかった。

本当に簡単に葬儀をして、両親、祖父と一緒のお墓に納骨した。

天涯孤独……

10歳で両親を亡くし、21歳で祖父母を亡くした。

早くない?

これから、私が結婚して、赤ちゃんができたら、おじいちゃん、おばあちゃんにひ孫だよ!って、抱っこしてもらいたかった。

相手がいるわけでもなかったけど、今の職場でいい人を見つけて、職場結婚とか、そんなことだってあるかもよ!って……そんな風に思っていた。


身寄りが誰もいなくなって、唯一の心の拠り所は、中学生の頃からずっと読んでいる

“”佐倉あお先生“”の小説だった。

淡い恋心みたいな優しいお話が、私に恋に憧れを抱かせてくれたし、ぱっとしない女の子の成長物語の、“”メイクひとつで変われるくらいなら“” は、私にすごく影響を与えた一冊だ。

これを繰り返し繰り返し読んで、私もいいオンナになりたい!!と思ったものだ。



そんな憧れの人、あお先生と、直接お会いすることができて、メッセージのやり取りをさせてもらえるようになるなんて。

夢のようで、なんだかまだ信じられない。

嬉しくて誰かに話したくなるけど、職場の同僚に話すような話しでもないしな。

あお先生のことを考えると、胸の奥が温かくなる。

手の届かない空想上の憧れの人から、現実に存在する人になった。

大好きな人になっていってしまいそうで、怖かった。

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