新たな魔法
【反逆者の烙印】、神域を犯す危険人物と神に見做された証。因果律を操作されない、という怪しげな加護。烙印って加護じゃないんじゃないかと思ったが、ステータス上は加護に属しているので加護なんだろうよ。
そもそも、神域ってどこやねん。
因果律を操作されないとか小難しいことが記載されているのが気になるよなぁ。頭脳を使った戦いよりもパワー対パワーの戦いの方が俺は好きなんですけどね。
俺を転生させた死と再生の神様による、俺だけの特殊能力。ステータスを詳しく見られる能力で【反逆者の烙印】を確認してみても、やはりその効果はいまいちよくわからないものだった。
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反逆者の烙印
・神域を侵す危険があると見做された者に与えられる加護。
・大いなる存在に認知された結果、因果律を操作されることはない。
・神力の操作、耐性に補正(神力所有者でなければ無効)
・志を同じとする者達からの信仰で能力上昇(神力所有者でなければ無効)
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いやいや、神力ってなんやねん。
上二つはステータス上の表記と同じ内容だ。だけど下二つは残念ながら俺には関係がない。こちとら一般人だぜ、神の力なんか使える訳がない。…まぁ、邪気なら使えるんですけどね!
ということで下二つは全く関係ない効果だ。大体、志も何も神に反逆する気なんてものは一切ない。五十歳まで無事にこの世界で過ごすことが俺の目標だ。まぁ、それが志というのであれば、長生きしたい人なんてこの世界にはたくさんいるだろうから、俺が神力なんて持っていれば能力爆上がりなんだろうけどさ。
正直に言えば、敢えて文化レベルを抑制しているこの世界の神のやり方に思うところが無いわけじゃない。だけど、それでこの世界の人々が安寧に暮らしているならそれはそれでいいんじゃないかとも思っている。世界の在り方なんて俺には余りあるものだ、関わり合いになる気は毛頭ない。
それに対して異を唱えた邪神こと進化と発展の神を寄って集って滅したというのは、流石に邪神ことズワゥラスに同情はするけどね。とはいえ、獣人族の言い伝えや、邪神を崇める組織にいたミトの話を聞くと邪神のやり方もなかなか過激だったようだし、因果応報なのだろう。
そうそう、邪神といえば俺の加護【邪神の恨み】によって使える邪道魔法のスキルレベルが三に上昇した。先のスタンピードで使うまいと心に決めていた【絶望の衣】を使用して魔物を殲滅したのが要因だろう。
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邪道魔法
・邪神とその力を与えられた者のみが使用できる闇魔法の上位魔法。
・世界のあらゆる命を弄ぶために邪神により創られた魔法。
・使用可能:絶望の衣、闇の聖域、穢れの波動
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スキルレベルが上昇したことで使用可能になった魔法が二つ。【闇の聖域】と【穢れの波動】という、どちらも物々しい名前の魔法だ。
最初から使えた【絶望の衣】はその説明文から封印をすぐに決めたが、今回新たに覚えた【闇の聖域】の効果は素晴らしく、この魔法を創った邪神に感謝すらしたほどだ。
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闇の聖域
・虚ろなる世界の間に自分だけの聖域を創り出す。
・聖域では魔法の使用を制限。
・出入口の他に特定の出口を設置可能、数はスキルレベルと同数。
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これは簡単に言ってしまえば、虚ろなる世界の間、たぶんだけど時空の隙間的な場所にセーフエリアが確保できるというトンデモ魔法だ。実際に使ってみると眼前に黒い靄のようなものが現れた。そこへ飛び込んでみると真っ白な空間に出入り口であろう黒い靄。そして紫色の魔法陣が四つあるだけの世界だった。
とりあえず魔法の制限について調べてみようと、生活魔法を使おうとしたが上手く魔力が練れなくて発動すらできなかった。俺が使える魔法を全部ではないがある程度試したところ【裏倉庫】だけしか使えないことがわかった。【闇の聖域】内は影が存在しない不思議空間なので【影移動】は試していないが、空間に干渉できる魔法だから【裏倉庫】だけは使えるのだろうか。よくわからん。
そしてなにより注目すべきは「出入口の他に特定の出口を設置可能」という点だ。魔法を発動した場所が随時出入口となるようだが、それの他に出口が設置できる、つまり【闇の聖域】を経由して転移ができるということ。【闇の聖域】を使えば今の俺のスキルレベルで三つの出口を指定できる。
【影移動】という転移魔法を所持している俺だけど、五つしか転移座標を指定できないうえに、座標の登録は古いものから上書きされるという仕様だ。その微妙な使いにくさに不便を感じていたからありがたい。普通の人からしたら転移魔法を持っているだけで羨ましがられるんだろうけど、人間って我儘だよね。
【闇の聖域】の魔力消費は空間を作るというだけあって最初に発動した時にはドカドカと魔力消費をしたのだが、一回空間を作ってしまえば聖域に繋がる道を作るだけのようで、一回当たりの魔力消費は【影移動】と変わらないのもありがたい。消費魔力がそこまで多くないので、【邪神の魔力】を発動しなくても使用可能ということは普段使いができるってことだ。
で、早速出口に指定したのは「ラスファルト島」、「シエイラ地下遺跡最下層」、「ガニルムの倉庫地区」の三つだ。「ラスファルト島」は【影移動】の座標がなくなってしまったら二度と辿り着けないだろうし、「シエイラ地下遺跡最下層」は異世界召喚者で大切な友人でもあるタイスケとはこれからも頻繁に会うだろうし、【影移動】の座標を書き換える度に行くのもなんか悪いしね。
そういう訳で【影移動】の座標はかなり余裕が出てきた。この先、訪れた先でお気に入りの素敵プレイスが出てきたら随時書き換えていくつもりだ。
邪神よ、ありがとう。
…で、だ。
邪神に感謝をしたのは【闇の聖域】だけ。
もう一つの新たに覚えた魔法である【穢れの波動】についてはクレームしかない。
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穢れの波動
・指定した意識のある存在に対して非常に不快な思いをさせることができる。
・身に纏えば、生きとし生けるもの全ての存在から嫌悪される。
・付与魔法としても使用可能。
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いや!? なんなん!? これ!?
嫌われるための魔法っていつ使うんだよ!
それに付与魔法ってそんな効果のある魔道具なんて需要ある訳ないだろっ!
と、効果を確認してみると試してみる気にもならないゴミ魔法だった。【闇の聖域】が圧倒的便利魔法で期待値も高かったから、ステータスでその詳細を確認したときには開いた口が塞がらなかったよ。
封印決定、今後使うことはないだろう。さようなら、アディオス、グッバイフォーエバー。
リザードマンによるスタンピードで変化したのはざっとこんなところだろう。細かいところを挙げれば、植物魔法がスキルレベル七に上がり最早大魔導士レベルにまでなったことや、ステータス値がこれまたかなり上昇したこともあるけどね。
「主殿、先程から一体誰と話しているのだ」
「フッサ、主様は時折こうやって自分自身と向き合っておられるのですよ。邪魔をしてはいけません」
寝入っていると思っていた眷属二人だったが、俺の独り言が聞こえていたようだ。その生温い眼差しを向けられつつも馬車は進んでいくのであった。
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