ブランブラム校の一日の始まり

 目が覚めると八時だった。寝坊だ。心臓を打たれるような心地に眠気が吹き飛ぶ。歯磨き、着替え、出がけに食事をコップ一杯流し込む。外套を翻して急ぐと、待ち合わせ場所にはまだクラスメイトの姿があった。

「ノスフ、早く!」

 両腕を振って手招きしてくる。手を振り返して応えた。

 息せき切って走った先にようやく校門が見えた。教室にすべり込む一歩手前で始業の鐘が鳴り、教壇からの眼光に二人してたじろぐ。

「み、道に籠が落ちてたんです。網目を数えてたらこんな時間に」

 頬を引きつらせて言うと、カーミラ先生は席につくよう無言で促した。なんとかなった。月影の射す席で鞄を開けてすぐ、吸血実習の教科書を忘れたことに気がついた。




毎月300字小説企画 第7回(2023.7.1)

お題「朝」

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