第2話

 家に帰っても、職場のデスクにも結婚した時の写真が飾られている。仲の良い夫婦を周囲に感じさせるためだ。


「とても綺麗な奥様ですね。」


 妻は周囲から見ると綺麗らしい。


「あぁ、僕には勿体無いくらいだよ。」


 決まって僕はそう返す。


「孫はいつになったら見せてくれるんだい?」


 正直僕は子供が苦手だ。


「まだ2人の生活を楽しんでいたいんだ。」


 これも決まってそう返す。子供がもし出来たとしてもそれは妻とではないと思う。僕にはずっと昔から愛している人がいるから。世間で言うとこの愛人にあたるけど、僕の中では彼女の方が妻だ。だけど表向きは正妻と仲良くやってないといけない。かと言って妻が嫌いなわけではない。気立はいいし、賢いし、僕のことも支えてくれるいい妻だ。なぜ僕にそこまでしてくれるのかはわからない。あっちも親が勝手に決めてきた相手だからそんなに僕に対して気持ちはないだろうし。


「今日は仕事が終わりそうにないから帰れない。ごめん。」

「大変なお仕事が入ったんですね。気をつけて下さいね?」

「あぁ。なるべく早くに終わらすよ。」


 なにも責めてこない。むしろにこやかな方だ。妻の悲しそうな顔を僕は見たことがない。ここ数年は特に。





 なんとか仕事を終えて会社を出て一目のない場所へ行くと愛する人へ連絡する。


「今終わったよ。昼間急いで全部終わらしたから今日は大丈夫。一緒に過ごそう。」


 電話を切ると予約していた花束を受け取ってレストランへ向かった。


 店に着くと既に彼女は到着していた。


「ごめん、待たせたね。」

「1時間待ったの。寂しかったな〜。」


 肩肘をついて目を伏せる様子からずいぶん待たせてしまったのだと思いすぐに謝った。


「なんてね!今来たところ。お水も来てないでしょ?」

「なんだよ。焦ったー。」


 意地悪に笑いながら、項垂れる僕を見て楽しんでいる彼女の近くに行くと花束を渡した。


「素敵な花束!」

「オレンジ色の花たちが君みたいだろ?」

「嬉しい。ありがとう!」


 何年経ってもいたずら好きなとこも、クシャッと笑った顔も全部が大好きだ。君が僕と結婚していたらどれだけ楽しい家庭を築けただろうか。



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