第2話 報酬


 「強姦未遂に銃刀法か、良くやったな!」

 翌朝、署長室に呼ばれ、署長の鬼塚が激励の言葉をかける。

「そんなことより、振込お願いしますよ。」

 民営化後の警察は完全に歩合制、基本給はあるが、検挙率で大きく給料が異なっているからだ。

「ああ、わかっている、今回はほとんどお前が処理した事件だからな、1割でどうだ。」

「ちょっと待ってください、危うく刺されるところだったんですよ、せめて2割にしてください。」

「仕方ねーな、今回は特別に2割だ、その代わり、次も頼むぞ」

 署長の言葉に返事をせず、正義まさよしは署長室を後にする。

 警察は逮捕して終わりではない、逮捕した後の手続きが想像以上に面倒くさい。

 民営化され、書類が簡略化されたとは言え、作成する書類は山ほどある。

 今回、逮捕したのは正義だが、当然正義だけでは書類を全て作ることができず、何人かで協力して作成している。

 事件を扱った場合、会社の売上として4割、残り6割を事件を取り扱った者が報酬を分ける仕組みとなり、割合は署長が決めているのだ。

 民営化から15年、全国の犯罪発生率及び交通事故発生率は年々増加していた。民営化するまでの犯罪発生率及び交通事故発生率は年々減少、治安は良く、事件事故が少ない平和な世界だった。

 そのため、年々、警察の負担は減っていった。

 そして、それに不満を持ち、面白おかしくとりあげた者がいた‥それはマスコミだった。

 「平和な世の中に警察は不要、税金の無駄遣い」

 連日連夜警察を不要とする放送が続いた結果、警察民営化の動きが一気に高まり、ついに警察が民営化することになったのである。

 署長室を後にした、正義は、交番に向かっていた。

 正義の職場は、新宿駅前交番、民営化された後も交番は存在していた。今日は、警察学校から、新しい新人の巡査が交番に配属される予定で、新人の指導には正義があたることとなっていた。

 

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