第20話 王女様帰還(遂に……)

 遂にリリィとクリスが異世界に帰る日が来た。


 この日は朝からリリィが雄一にくっつき離れない。


 ゲームをしながら雄一に寄りかかるリリィ。


「おい、リリィ、くっつくなって!」

「何をおっしゃってるの? くっついてきているのはあなたの方ですわ!」


 仕方ないと思い、雄一がソファの方に移動し本を読んでいると、今度はリリィがBL本を読みながら雄一の膝に寝転んでくる。


「お前、なんでくっつくの?」

「くっついてませんわ! 寝転んだら雄一の足があっただけです」


 この後も雄一の膝に座りアイスを食べたり、雄一の背中でモデルガンをいじったり、リリィは夜になるまで雄一から離れなかった。


「あらあら、リリィちゃんもまだまだ子供みたいなところがあるのね」

「かおり様、あれでも姫はまだ17歳です。性格はクズですが、まだまだ寂しがり屋なのですよ」

「あら、クリスさん、リリィさんに聞こえたら、あっちの世界で斬首されるんじゃないの?」


 かおりは冗談で言ったが、クリスはリリィならあり得ると思い、かおりにリリィには言わないように口止めするのであった。


 そして夜になり遂に異世界から迎えの者が現れる。


「雄一、お別れですわ! こちらの世界の挨拶では別れの際にハグをすると聞きます。特別にわたくしとハグすることを許します!」

「まあ、この国ではあまりやらないけど、海外ではよくそうするな……」


 雄一はかおりがいるので気にしたが、かおりもさすがに最後の別れとあり、笑って見逃した。


「じゃあ、元気でな」


 雄一がリリィを優しく抱きしめると、リリィは雄一の腰を力強く抱きしめてきた。


「チャンスですわ! このメガネをわたくしの世界に連れて帰るのです。早く転移魔法を!」

「ふざけるな! お前の世界は人権意識が希薄だから絶対に行くものか!」


 雄一はハグしていた腕を放し、リリィの顔を掴み必死に引き剝がそうとする。

 5分くらいこのやり取りを繰り返し、なんとか雄一はリリィを引き剝がすことができた。


「お、王女さま、ジョーク、で、ですわ……」


 息切れするリリィ。


「し、心臓に悪いジョークは、や、やめてくれ……」


 同じく息切れする雄一。


 なんとか帰る気になったリリィはクリスと一緒にクローゼットの中に入り、お付きの者が転移魔法を唱える。


「今度は失敗するなよ! この人数で残られたら、もう養えないから!」


 雄一はもう会うこともないので本音で向き合う。


「あら、雄一ったら本当は寂しいくせに、まったくツンデレなのですわ!」


 リリィは最後に笑みを浮かべると、クローゼットの扉が自然と締まり、ドンっという音がしたかと思うと、クローゼットの中は静かになった。


「前と同じことがあると怖いから、ちゃんと調べよう!」


 雄一は前に一回失敗してリリィたちが戻ってきたことを思い出してクローゼットの中を調べるが、今度は魔法陣も消えていて二人が戻ってくることはなかった。


「あれ、なんだろう? メモ書きみたいのが落ちている」


 クローゼットの端になにやらメモ書きみたいのが落ちているので拾って見てみると、リリィの字で『またいつか戻ってきますわ!』と書いてあった。


 雄一はそのメモ書きを眺めながら、ニッコリと微笑み呟くのであった。


「もう、絶対に戻ってくるなよ……」


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 王女様リリィを最後までお読みいただきありがとうございます!

 無事に王女様は異世界へと帰ることができました。

 また、ニーズがあれば『リターンズ』でも書ければと思います。


 八幡太郎

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