第18話 王女様とお花見

 3月も下旬になり桜の咲く時期となった。


「雄一、わたくしお花見がしたいのです!」

「花見か、今週の日曜日に4人で花見に行くか」


 雄一は近くの公園にお弁当を持って、リリィやかおりを連れてお花見に行った。


「これが桜ですか? 美しいものですな!」


 大司教・クリスも桜を見て大いに感動している。


「雄一、あそこの方々は頭にネクタイを巻いて踊っておりますが、これがこちらの世界でのしきたりですの?」

「いや、あれはただの酔っ払いだから……」


 リリィに取って桜の花だけでなく、花を見て騒ぐ人々を見るのもとても新鮮であった。


「そういえば、わたくしがブラック・プリンセスで活動していた時に、桜の模様の入った冒険者服を着ている方々もいましてよ」

「いや、それはたぶん花を愛でてるわけじゃないと思うけど……」


 雄一たちも持ってきたお酒を飲むことにした。


「クリスさんとかおりは問題ないけど、リリィは何歳なの?」

「あら、この間からわたくしに対する独占欲が強まっていると思ったら、遂にわたくしのプライベートまで知りたくなりましたの?」

「いや、こっちの世界は20歳未満は酒飲んじゃダメなルールだから……」


 適当にリリィをいなし、年齢を聞くと、リリィはまだ17歳とのことであった。


「お前、17歳でその生意気さはヤバいぞ!」

「あら、王女なんてみんなこんなものですわ!」


 雄一は改めてリリィの世界の王族とは絶対に絡みたくないと思った。


「でも、みんなでお花見来れてよかったじゃない! 来年も四人で来れるといいわね!」

「かおり、それは叶わないのですわ!」


 急にテンションが下がるリリィ。


「どうしたの? 何かあったの?」


 雄一がリリィとクリスに尋ねると、どうやら異世界からの迎えが1週間後に訪れるらしく、リリィは少し気持ちが落ちていたのである。


「雄一、明日は日曜日ですし、わたくしを今まで行ったところに連れて行ってくださる?」

「まあ、いいけど。かおりとクリスさんはどうする?」

「私は明日は仕事あるからパス」

「わたくしめも明日は職場の仲間に別れのあいさつをしてきますので、お二人でどうぞ」


 こうして、異世界からの迎えが来ることを知り、雄一とリリィは今まで行った東京タワーや浅草など二人でデートすることになった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る