第17話 王女様と藁人形
ある晩、リリィは深夜までゲームをしていたが、急にアイスが食べたくなり、コンビニへと向かう。
「雄一にはこの冒険服は外では着てはいけないと言われましたが、着替えるのも面倒ですわ! あのメガネも寝ていることですし、この格好で行きましょう!」
リリィは雄一が完全に寝ていることを確認し、特攻服でコンビニへと出かける。
リリィがアイスを買ってマンションに帰る途中、とある神社で御神木に向かって何かを打ち込んでいる白装束の女を見かけた。
「こんな時間に何ですの? あの白い恰好、聖職者か何かかしら?」
リリィが近づいてみると、木に呪いの藁人形を打ち込んでいる若い女性であった。
「あら、あなたは冒険者さんですの?」
リリィに見られた女性はヤンキーが遊び半分で丑の刻参りを見に来たと思い、持っていた金づちで襲い掛かるが、リリィお得意の火炎魔法や風魔法であっという間に倒されてしまう。
「わかりまして? あなたではわたくしの遊び相手にもなりませんわ!」
背中に『姫連合』と『black princess』という刺繍の入った黒い特攻服。
外から聞こえる激しい音に目が覚め、社務所からそーっと外を見る神主であったが、黒い特攻服と白い特攻服のヤンキーが夜の神社でタイマン勝負していると勘違いし、そのまま、気づかれないように眺めているのであった。
「ところであなたは何をなされていたの?」
「付き合っていた彼氏に浮気されて、何とか復讐してやりたいと呪いの藁人形などをやってしまったのです……」
女は泣きながら理由を説明し、リリィは女の話を聞いて呆れるのであった。
「全くこの世界の呪いは迷信的な上に生ぬるいですわ! わたくしが本当の呪いを見せてあげましょう!」
リリィは以前も使った相手が反省するまで口内炎が絶対に治らないという地味だがとても厳しい魔法を浮気した男にかけてあげた。
「これでよろしくて! もう、こんな夜中におかしなことをしてはダメですよ!」
「ありがとうございます! あなたのお名前は?」
「ブラック・プリンセスのリリィですわ!」
完全に地元のヤンキーと勘違いした女性であったが、リリィに感謝するのであった。
そして、窓からそーっと様子を伺っていた神主も黒い特攻服のヤンキーが白い特攻服のヤンキーに勝って詫びを入れさせて帰って行ったことを確認すると、安心して警察に連絡するのをやめて、眠りにつくのであった。
雄一が知らない夜の街では『ブラック・プリンセスのリリィ』という名が少しずつ広まっていくのであった。
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