第16話 王女様スカウトされる

 とある休日。

 雄一はリリィの髪が伸びてきたこともあり、表参道にある知り合いの美容室にリリィを連れていく。


「また、わたくしを自分好みの女にしようとなさるの?」

「髪、伸びてきただろ! その髪で部屋で特攻服着てると本当のヤンキーみたいだから……」


 雄一は悪態をつくリリィを美容室に連れてきて、リリィのカットが終わると、街の感じと違和感がないように新しい洋服も購入してあげた。


「まったく、わたくしは雄一の着せ替え人形ですわ!」

「ほら、生意気口ばかり叩かないで、帰りにアイス買ってあげるから」

「ハー〇ンダッツがいいですわ! ハー〇ンダッツを所望します!」

「はいはい」


 異世界王女の扱いにもだいぶ慣れた雄一。 

 リリィを連れて表参道の街を歩いていると、一人の男性がリリィに寄ってきた。


「お姉さん、ものすごく美人ですね。うちの芸能事務所で女優として活動してみませんか?」


「いえ、この子はそういうの興味ないんで!」


 雄一はリリィの手を引っ張りスカウトの男から引き離す。


「雄一、なんですの? 今日はわたくしに対する独占欲が強すぎますわ! 発情期ですの?」

「いや、獣じゃないから発情期とかないから! 芸能活動なんてしたら、異世界人ってバレるだろ!」

「あら、この世界には昔、こりん星から来たというアイドルが活躍していたと聞いたことがありましてよ!」

「いや、それ売り込みのネタだから! というか、それ20年前くらいの話だろ、なんで知っているんだよ!」


 雄一はリリィが異世界人とバレたら大変な騒ぎになると思い、直ぐに車に乗せてマンションに戻った。


「あら、リリィちゃん可愛くなったじゃない! 服もオシャレでいいわ!」

「かおり、今日は雄一が強引で凄かったのです。わたくしが殿方から声をかけられたら、手を強くつかんで、俺の女だ的な感じでわたくしが警戒していなかったら、車で唇を奪われていたはずですわ!」


 リリィが適当な説明をかおりにしてしまい、またもや弁明に数時間費やす雄一であった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る