第15話 異世界の節分
ある晩、雄一が帰宅すると、リリィがリビングで黒い特攻服を着ながらゲームをしている。
「リリィ、その服どうしたの?」
「ああ、この間解散した冒険者パーティで作っていたチーム服ですの」
黒い特攻服の背中には『姫連合』という刺繡と『black princess』という刺繍が入っており、リリィが金髪なだけに雄一はかなりそれっぽいなと眺めていた。
「その服、部屋着としてはいいけど、外では着るなよ!」
「あら、外では着るなとか彼氏面はやめて欲しいですわ!」
「違うよ、警察の厄介にならないように心配してるんだよ」
雄一はリリィがゲームをしながら食べているお菓子を見て節分の豆まきで使う大豆であることに気づいた。
「あれ、リリィ、節分の豆まきとか知っているの?」
「知っていますわ! 以前、何かの漫画に乗っていましたもの。魔物にマメをぶつけるこの世界の宗教的な儀式ですのよね?」
雄一はリリィが意外とこの世界の文化を勉強していることにびっくりするが、異世界にも節分の豆まきみたいな行事がないのか気になった。
「なあ、リリィの世界には豆まきみたいな行事ないの?」
「ありますわ! この世界からゲーム好きの若者を勇者として召喚して、魔王と戦わせて無病息災を祈りますの!」
「え、勇者召喚ってそういうイベントだったの?」
「そうですわ! まともに毎回魔王がやられていたら、魔族も絶滅してしまいますもの。あれは魔族側も承知の上でやられた演技をするイベントですの。知らないで頑張っているのは、この世界から連れてこられる中二病の頭の弱い若者たちだけですわ」
雄一はリリィの話を聞いて、絶対にリリィのいる異世界にだけは行きたくないと思うのであった。
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